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魔力2(ゼロスフィリア)

ちょっと暗いかも。暗いの苦手な方は要注意。

 ゼロスフィリアはレイを風呂場に見送った後、自室に戻って、コートを脱ぎ、手袋を外す。


 イヤーカフを撫でながら、今日の希有な出会いを思い出す。


 

 ーー出会いは全く良くなかった。決して人相も愛想も良くないし、いきなり壁に押し付けるという手荒な真似もした。それなのに俺を恐れなかった。


 

 ……もう、自分と触れ合える人なんて存在しないと思ってた。


 最近は何で生きているのか分からなかった。


 依頼を達成しても、助けても、返ってくるのは恐怖・恐れ・怯えといった負の感情。


 相手も恐れたくて恐れてる訳でもないし、必死に抑えてお礼を言ってくれているのも分かる。


 本能に恐怖心を与えてしまう俺のせいなんだから、仕方ない……。


 この魔力はどうにもならない。


 周りに影響が出ないようにもっと抑える方法がないか探した。


 魔力を減らす方法がないかも探した。


 果ては魔力を封印する方法も探した。


 でも、方法は無かった。


 そこからは魔力と向き合って開き直ろうと思った。


 この魔力があったからこそ助けられたことだって、助けたことだってある。


 この人には受け入れられない魔力と共に生きていくしかないんだ……。


 この魔力をどうにかすることを諦めて、仕方ないと受け入れて残ったのはただの虚無感。


 もう色々どうでも良かった。


 周りに気を使うのもやめたし、なんとなくやりたい事をやって何となくすごす。


 日々世界は色褪せていく。


 もう何かを感じることが出来なくなりたかったから色褪せていく世界はちょうど良かった。


 今日もそんな惰性で過ごしてる中、少し気が向いた。


 その男を見た時に感じたのは弱いのに危険。

 ……意味が分からなかった。


 あまり良くなさそうな男達に連れられて行く。


 気が向いたから助けても良いかと思った。

 ……ソイツの思考が良く分からなかった。


 死神ゼロという名前は有名な筈なのに反応しなかった。


 声をかけたら普通に返答された。

 ……意味が分からなかった。


 手荒く扱っても、フードを外していても目線は外されなかった。平然と話しかけてくる。

 ……ちょっと頭が弱いのかと思った。


 それでも気が向いたから、男の誘いに乗って地下酒場へ行った。


 耐魔制御の衣服と言っても話が通じない。

 挙句に外してみてくれと言った。

 喧嘩を売られてるなら買っても良いかと思った。


 もう錯乱してもおかしくない状態なのに、男は変わらない。


 近付いても変わらない。


 どうにでもなれと、ピアスまで外したのに、何も変わらない所か、直接触れて「大丈夫だよ」と言われた。


 俺はこの世界に居ても居なくても良い存在だと思ってた。


 人に恐怖心しか抱かすことが出来ない俺が、初めてこの世界に存在してもいいよと認められた気がした。


 それからは良く覚えていないが、俺の存在を認めてくれた男ーーレイーーの側にもっと居たいと思った。



 ーーゴトーン。


 ゼロスフィリアは部屋の外から聞こえたその音に自分の思考の世界から一気に現実に帰ってきた。


 ……レイが風呂場で転んだ? 


 見に行った方がいいのか? 


 でも物落としたとだけの可能性もある。


 ちょっと転んだだけの可能性もあるし。


 でも、万が一ということもあるかもしれないし。


 ……いや、気にしすぎか。

 

 念の為。


 ……外から声を掛けてみれば良いか。


 ーーという結論を導き出すまでに、音がしてから約10分ほどかかっている事に、人との触れ合いが少なかった弊害が出てる事を彼は知らない。


 ゼロスフィリアは自室を出て、浴室に向かう。


 ……静かだ。嫌な予感にドアをそっと叩きながら声をかける。


「レイ? 大丈夫か?」


 ーー返事がない。


 強めにドアを叩いて再度声をかける。


「レイ? 返事しろ。……入るぞ」


 そっと、浴室のドアを開けると、レイが倒れていた。

 あまりの衝撃に頭が真っ白になる。


 いやそんな突っ立てる場合じゃないと、レイの側により体を揺すり声をかける。


「レ、レイ。どーしたんだ。しっかりしろ!」


 シャワーを浴びていた筈なのに冷えた体、血の気を失った青白い顔色。良くみれば全身に打撲跡と擦り傷。骨は問題なさそうだが、明らかに痛め付けられた後のように見える。


 こんな状態で、今まで平然と喋り歩いていた事に再度衝撃を受ける。


 混乱しつつも、傷をなんとかしなければと、ゼロスフィリアのアイテムを収めている次元空間から、高級ポーションを何本も取りだし全身にバシャバシャ振りかける。


 ポーションをかけた箇所から淡い光と共に傷が消えて行く。


 外から見える傷は治したのに、それでも目覚めず、顔色は青白いまま。

 

 躊躇わずにポーションをかけたので、内部で損傷を起こしてても治っている筈だが、足りないのかと、上半身を起こしポーションを無理矢理飲ませる。


 それでも状況は変わらず。


 異世界人だからポーションが効かないのか、先程食べた物が合わなかったのか、何が原因かわからないが


 ーーこの世界が異世界人を排除しようとしてるのか。


 せっかく得た希望が急速に消えて行く。


 ……やはり俺は……


 と、負の思考に落ち入りそうになっていた所に、部屋の外から声がかかる。


「ゼロスフィリア様、先程通信させていただいたのですが、何点か確認させていただきたい事がございまして……」


 ゼロスフィリアは急いでドアへ駆け寄り、開けざまに

「助けてくれ! レイが……」


 と、廊下にいた受付の執事風の男に助けを求める。


 執事風の男は何かあったと判断し、部屋に入ろうとしたが、出来なかった。


「ゼロスフィリア様、魔力を抑えていただけますか。

部屋に入らせていただきますよ」

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