お休み期間1
ゼロスフィリアの状況を確認する為に、肩を揺すって起こす。
何度か瞬きした後、ゆっくり目を開けた。
「フィー君。朝だよ。俺が分かる?」
ゼロスフィリアは怜を見ているが、見ていない。当然回答もない。
恐らく過度なストレスから防衛本能で現実逃避しているのだろう。
きっと今まで1人で頑張ってきた反動もあり、今は心を休める時なのだ。幸い元いた世界の時とは違って、怜には決まった仕事もない為、ゼロスフィリアの世話をする事も可能だ。
里の部下達にも心を病んでしまう人や壊れてしまう人はそれなりにいた。医学や心理学の専門家では無いが、怜が話しかけたりすると回復が早いという不思議な統計結果もあり、時間があればこまめに見舞いに行ったりもしていた。そんな経験から、言葉は無いがちょっとした反応は返せるゼロスフィリアは、ちゃんと現実に戻ってくるだろうという根拠のない確信があった。
取り敢えず、昨日の夜断念したこの倉庫内の捜索と、ローレンスへの連絡とご飯を何とかしたい。
「フィー君、ちょっと倉庫内を見てくるから待ってて」
怜はゼロスフィリアにそう告げると立ち上がり……は出来なかった。
昨日と同じ状況である。ゼロスフィリアが怜の服の裾を掴んで離さない。何なら昨日より強い力だ。
困ったなぁと頭をかき、ゼロスフィリアに話しかける。
「お腹空いたでしょ? あとローレンスさんにも連絡しないといけないから」
ゼロスフィリアは無表情で怜を見ている。服を握ってる手は益々力強くなる。それどころか威圧も凄くなってくる。
と、ゼロスフィリアのピアスが片方なくなり、片方にヒビが入っている事に気がついた。
もしかして、この威圧っぽいのは魔力ダダ漏れ状態ってことか!?
うーん。街へ連れて行ったら、間違いなく問題になりそうだ。
可哀想だけど、一度寝てて貰うかな。
そう決めると、ゼロスフィリアの首元に触れた。
ーーバチッ。
無事ゼロスフィリアの意識を刈り取ったようだ。
ここの世界のスキル認定で“電光石火?”となっていた物と同様、生体電気をスタンガンのように使用しただけだ。
後で、ギルドカードもチェックしないとなと思いつつ、ゼロスフィリアが目覚める前に戻ってきたい為時間勝負だ。
ゼロスフィリアに毛布を肩までかけると、男達の仲間がいないとも限らないので、念の為に部屋の内鍵を怜の七つ道具の一つを使って外から閉め、急いで行動を開始する。
まずは、氷漬けになっている男達の部屋だ。
部屋全体の氷の世界はもう溶けてなくなっていたが、カシラ含む男達は未だ氷漬け状態だった。
一体どういう事なのか魔法とは不思議だ。
時間がないので、氷漬けの男達は後回しにして、部屋を見渡すと怜の空間魔法付き鞄とダガーセットがローテーブルに置いてあった。その近くにある革袋はもしかして、怜の身代金じゃないかと判断し、後でゼロスフィリアに返す為、一旦空間魔法付き鞄にしまうと、気配を消し一目散に宿へ向かった。
♢♢♢
ーー30分後。
「さ、流石に疲れる」
場所を完全に把握した怜は、木に登り、垣根を超え、屋根をつたい文字通り最短距離で宿へ帰ってきた。
門を入り、まっすぐ受付へ向かう。
と、早朝にも関わらずローレンスはいた。怜を見るとすぐに受付から出てきた。
「レイ様! ゼロスフィリア様とは合流されましたか?」
「はい。合流出来ましたよ。ただ、ちょっとフィー君の心が壊れかけちゃってて、あまり良くは無いので必要なもの取ったらまた戻ります。あ、可能な範囲で良いのでお手伝い願えますか?」
「勿論でございます。何なりと」
よく見ると、ローレンスは寝ていなかったようで隈が酷い。自分は悠々と寝てしまっていた為少しだけ罪悪感が苛まされたが、今は気にしない事にしておく。
ローレンスには簡単な経緯を説明し、倉庫の存在を確認する。たまたまローレンスが持っていた15年程前の地図には存在していたが、現在の地図では、あの倉庫は無かった事になっていた。
ヤバイの(男達の仲間など)は来るかもしれないが、一般人は来ることが無さそうなので、魔力の関係もあり、ゼロスフィリアが落ち着くまでは暫定で、あの倉庫を拠点とする事に決める。
そして、墓地含め倉庫にある遺体の処理をどうしようかと相談すると、ローレンスの知り合いに処理できる人がいるから昼頃に人を寄越すとのこと。
……本当にローレンスは何者なのか。。。
早朝でお店がやっていない為、業務に支障がない範囲分の今ある食材を貰い、一度部屋に戻り倉庫で暫く過ごすのに必要そうな着替え等をゼロスフィリア分も含め空間魔法付き鞄に入れる。
また、ローレンス自身も一度倉庫に来てくれるそうだ。宿の本業がある為長時間はいられないが、ゼロスフィリアの状態を見たいのと、食材を届けてくれるそうだ。
必要最低限のやる事を済ますと怜はまた倉庫へ戻って行った。
あくまでファンタジーなので、そーいうものだとおもってくださいw




