追いかけっこ4
※残酷描写あり。お気をつけください。
「あら〜。フィー君ハッスルしちゃったのね。ハッスルは古いか……」
ーー20:00ちょっと過ぎ。
墓地の入り口辺りに着いた怜は気配を消し、辺りをうかがう。人の気配はあるが、何故か動いていないようだし声も聞こえない。怜はそっと人の気配がある1角の方へ近付き状況を理解し、冒頭の言葉を発した。
人が8人程転がっている。息があるのは3人程だけ。ゼロスフィリアとお金のやり取りをする筈だった人はこの中にいるのだろうか? 緑の帽子は転がってないし、状況から見るにこの男達は足止めだろう。
ゼロスフィリアは緑の帽子の後を追ったか、嘘情報の場所に行ったかどちらだろう?
……分からない事があったら聞きましょう! という事で、生きてる3人のうち1人を起こす。
「起きてくださーい」
「……うう。お、お前なんでここに居るんだよ!?」
「?」
良く見れば今起こした男は、怜を豚小屋に入れた人だった。
「あー。先程ぶりです。お元気でしたか?」
「……」
ついつい、”お久しぶりです。お元気でしたか?”と同じニュアンスで、怜が元の世界で良く使ってた社交辞令を言ってしまったが、倒れている時点で元気ではないだろうと自分に心の中で突っ込みを入れて何事も無かったように仕切り直す。
「手短に状況の説明をお願いします。フィー君はどこに行ったんでしょうか?」
「……言う訳ねーだろ」
そりゃそーだよね。と怜は思いつつ男の小指を簡単に折る。
「え? ……ッ!」
「あー、正しく早く答えないと1本ずつ骨折りますよー。人間って全部で206本骨があるみたいですが、貴方はいつまで耐えられますかねー?」
男は恐怖した。あまりにも自然な動作で、いつの間にか手を取られていたし、気が付いたら骨が折れる音がして激痛が走っていたのだ。
目の前にいる男は眼鏡が無いせいか、幾分か鋭い目をした表情を一切変えず、誘拐した時同様、優しそうな声で、平然と拷問すると言っているのだ。
男は怜が自分より魔力が少ないと分かっているのに、本能が恐怖を抱き、逆えず怜に洗いざらい喋った。
♢♢♢
「……と、言うことは、嘘情報の方じゃなくて倉庫の方に向かったんですかね?」
「さぁな。俺は奴に嘘情報を書いた紙を渡すつもりだったんだ! なのに話も聞かずに跳び蹴りしやがって。俺はそこでのされたからその後の事はわかる訳ねぇだろ」
怜は男の頭を鷲掴みし、少し力を入れる。そんな筈は無いのに男は自分の頭がミシミシ鳴っているように感じた。
「もうちょっと落ち着きましょうね」
「ハイ。スミマセンデシタ」
「その嘘情報、紙を渡すつもりだったと言う事ですが、嘘情報の場所自体は皆さん知っていたのですか?」
「いや、場所を知ってたのは俺だけだ。ただ俺が嘘情報を書いた紙を渡す事は皆知っていた」
ふむ。と怜は考える。全員を昏倒させた後、この男の懐に入っていた紙の内容を見て、嘘情報の場所に行ってしまった可能性はゼロではないが、あのゼロスフィリアがわざわざ男の懐を探ったりするだろうか? ましてや、それを仕舞直すなんて事はしない気がする。
そう。男の懐にはまだ嘘情報の記載された紙が残っていたのだ。
となると、緑帽子の後をつけたか、ここにいる誰かに聞いたかして倉庫か小屋の方に向かった可能性の方が高いだろう。
取り敢えず、喋ってくれた男を手刀で昏倒させて方針を考える。
この男達はこのままで良いのだろうか? と思いつつ、意外にここで時間を使ってしまった為、只今20:40。
勿論行くならすぐに向かった方が良いのだろうが、
「マジで、またあそこに行くの?」
と、誰も聞いていない墓地で呟いた。
数時間前までいた所であり、盛大に迷いながらもせっかく帰ってきたのにまさかとんぼ返りするはめになるとは……怜はどっと疲れが押し寄せてきた気がした。
これなら、なんか食べてからくれば良かったと思いながら、気配を消して倉庫があった方へ向かって走り出す。
男達曰く通常歩けば3時間程かかる道のりだが、怜なら一度迷いながらではあるがかえって来れたのだから、半分以下の時間でいけるだろう。今度こそ無事合流出来ることを願う。
ーー怜が墓地を出たのは、ゼロスフィリアが墓地を出た約1時間10分後だった。




