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追いかけっこ3

 ーー時は遡り、男達が怜に猿轡をして、小屋から去っていった後。


 床に転がったままの怜は、まず現状把握に努める事にした。

 本当に何もない小屋だ。ただあちこちに血っぽいシミがある事から、そーいう用途で使われていたのだろう。

 そして、ホントに見張りすら付けられず、3人とも去って行った。怜の感知出来る範囲に人の気配を感じない。何か魔法的な何かで監視か制御でもされているのだろうか。

 ひとまず、体を起こして、後ろ手に縛られていた縄を外し、猿轡も外す。……怜にとっては縄抜けは造作もない事である。ましてやただの荒縄なら尚更。

 ずっと後ろ手に縛られていた体をほぐすと、服に仕込んでいた針金のような物を取り出し、ドアに向かう。この針金は元々、元の世界にいた時のものだ。身1つでこちらにやって来たとは言え、家業故にスーツにも仕込めるものは仕込んでいた為、最低限の道具はあり、今はこちらの服等に移し替えている。

 そして、ドアは隙間ガバガバで、鍵は今は懐かしき南京錠。……これはある意味罠なのだろうか? と思いつつ秒で解錠。


 ーー何も反応しない。


 ドアを揺すって、南京錠を落とす。


 ーー何も反応しない。


 ドアをそっと開けてみる。


 ーー何も反応しない。


 そっと、小屋から出る。


 ーー何も起こらない。


 取り敢えず、ドアは閉め少し前までいた倉庫の方へ足を向ける。


 流石に倉庫の方は人がいた。数人だが。落としたままの眼鏡や、取られた装備を回収したかったが、倉庫のセキュリティー的なものがどの位かさっぱり分からないので、怒られそうだがゼロスフィリアに協力してもらって後日取りに来ようと決めた。

 幸い、怜を狙っていたのはただのチンピラ(怜からすると)で、拠点も帰れさえすれば分かったも同然なので、後日でも問題ないだろう。ギルドカードを使用してメッセージは送っているが、先ほどのカシラの言葉が気になったので、一度ゼロスフィリアと合流する事にした。


 怜は小屋から音もなく離れ、もうすぐ陽が落ちる中、宿へ向かって静かに走り出した。


♢♢♢


「やっとここまできたぁー」


 怜はため息と共に1人ごとを呟いて、周りからは変な目で見られる。ようやく、昼間拉致られた場所まで戻ってきたのである。ここからは道も分かるので、一安心である。


 実は倉庫から離れた後、盛大に迷った。この街の地図は見たことあるが、細かな物は流石に把握していないし、そもそも現在地が分からない。まずは人のいる方へ行きたかったが、倉庫の周りは獣道しかなく、中々人のいる方へ行けなかったのだ。恐らく倉庫内に地下通路的なものがあったのだろう。


 流石に人通りが多い中で、走る訳にも行かないので、早歩きで宿へ向かい門を潜ると、ローレンスが慌ただしくやってきた。


「レイ様ご無事で。……ゼロスフィリア様はいかがなされました?」

「? フィー君? 会ってないけど」

「少々お待ちください」


 ローレンスは、顔色を変え宿の中へ足早に向かう。怜も受付前まで行ってローレンスを待っていると、冷えたおしぼりと手紙を差し出してきた。

 怜は流石ローレンス気がきくなぁと思いながら、冷えたおしぼりを少し腫れている頬に当て、手紙に目を通す。


「あー。これフィー君行っちゃいましたかね?」

「はい。それは必死な形相で」

「あちゃー。メッセージ入れたけどダメだったかぁ」

「……?」


 ローレンスは不思議そうな顔はしたが、特に何も言わず、怜の言葉を待つ。


 只今の時刻19:30ちょっと過ぎ。今から行って間に合うだろうか。行っても最悪またすれ違いになる可能性はある。が、嘘の場所を教えるとも言ってたし、振り回されるゼロスフィリアの心が心配だ。

 多感な年頃で傷付かないよう心の成長を止めてしまっていたようだが、安心出来る存在? の怜が現れたからか、今までの時間を取り戻すかのように一気に時間が流れ出している。その為、簡単に言うと情緒不安定な状態なのだ。


 ゼロスフィリアの足取りを追う事に決めローレンスに後を頼む。


「フィー君を迎えに行ってきますね」

「はい。……ゼロスフィリア様をお願いします」


 ローレンスが怜の手を握り頭を下げてお願いする。

 怜はローレンスの態度に驚く。情が湧いたからと考えても、ローレンスの態度は受付と客という分を超えているように見える。が、今は詮索は後にしてゼロスフィリアと合流するのが優先だ。その後、一緒に倉庫に行けば眼鏡や没収された武器も回収出来るだろう。


「では行ってきますね。帰りは遅くなると思いますが、大丈夫ですから先に休んでてくださいね。あ、夕食すみませんでした。明日楽しみにしてます」


 ローレンスを安心させるように微笑みながら言い怜は部屋から予備のダガーを装備すると墓地へ向かった。

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