追いかけっこ1(ゼロスフィリア)
※残酷な描写がありますので要注意
ゼロスフィリアは、手紙の指定にあったように18:55墓地へ到着した。
中へ進んで行くと、1角に緑の帽子を被ってローブを着た男がいた。怜は見える範囲には居ないようだ。
ただ、少し離れた所に息を潜めている人が何人かいる事が探知魔法で分かる。怜はそこにいるのだろうか。
手紙でわざわざ、緑帽子の男が墓地を出られるまで手を出さないように書いている位だから、ハッタリではなく契約魔法か何らかの制御魔法が怜にかけられているのだろう。逆に緑帽子の男が墓地を出さえすれば緑帽子の男に手を出しても問題ない事になる。ただ、あくまで怜を取り戻す事が最優先であり、緑帽子の男はどうでも良いので、お金と緑帽子の処遇は後回しだ。
ゼロスフィリアは注意深く緑帽子の男に近付く。
すると向こうから話しかけてきた。
「死神ゼロだな? それ以上近付くな。金をその場に置いて5歩下がれ」
「怜はいるのか?」
「ここには居ないが、これは黒髪のだろう?」
緑帽子の男が掲げて見せたのは、ゼロスフィリアが怜に渡した空間魔法付き鞄と武器屋で購入していたダガーのセットだった。
見るまでは何処か怜が拐われた事を信じきれない部分があったのだが、実際に怜の物を見ると現実と認めざるをえなく愕然とする。
何故怜は拐われたのか、あれ程の技量を持っていて容易に拐われるとは思えない。誰か人質にでも取られたのだろうか? 不意打ちでもあったのだろうか? お人好しな怜は誰かに騙されたのだろうか?
ーーまさか自分から誘い込んでいたとは1ミリも考えに及ばないゼロスフィリアであるーー
負の思考に眉根を寄せつつ、ゼロスフィリアは緑帽子の男の言う通りにする。
緑帽子の男は中身を簡単に確認し、
「黒髪はアイツらが知ってる。俺が墓地から出るまでそこから動くなよ?」
と、言うと墓地の外へ出て行った。
男が入り口を出るのと同時にゼロスフィリアは走り出し、潜んでいた人達の元へ走る。
それを待っていたかのように、矢が数本ゼロスフィリアに向かって飛んで来る。
2本はかわし、1本はロングソードで叩き切る。奇襲が上手くいかなかったと分かると、潜んでいた人達は武器を構えゾロゾロ出てきた。
探知魔法で把握していた人数と同じだ。怜は居ない。
「あの黒髪は……」
ここに居ると懐から紙を取り出して見せようとしていた男の言葉を、ゼロスフィリアは最後まで聞かず、1瞬で近付き跳び蹴りをかまして倒すと、次々に近くにいた人からロングソードで切り倒していった。
最初に弓で射てきた者含め、立っている人が誰も居なくなった事を確認すると、ゼロスフィリアはロングソードを構えるのをやめ、近くで呻いている1人を蹴り上げ、意識を自分に向けさせる。
「レイは何処だ?」
「知らない」
ゼロスフィリアは回答を聞くとともに、容赦なく切り捨てると、見ていた他の者に同じ質問をする。
目の前で行われる容赦ない斬殺を見て、流石に何かを感じたのか嘘の答えを言う所ではなく、思わず本当の事を喋ってしまう。
「ひ、東区の外れに使われていない倉庫があって、そ、その近くの小屋に閉じ込めてる。う、嘘じゃねぇ」
ゼロスフィリアはその言葉を聞くとその男を放置して、東区に向かおうとした。が、別の明らかにもう長くない男がゼロスフィリアの背に最後の言葉を投げつける。
「間に合えばいいけどな」
ゼロスフィリアは思わず振り返り、どういう意味か聞き出そうかと考えたが、少しでも早く向かった方が良いと判断して、男たちはそのままに墓地を後にする。
ーー男が言った言葉の意味は、この墓地から倉庫まで歩いて行くと3時間程かかる為、22:00からの怜の嬲り殺し開始迄には間に合わないという事だった。聞いていればまた違う結果だったのかもしれないが、幸か不幸か、ここからゼロスフィリアの歯車は狂い出してしまう事になる。
♢♢♢
墓地を出てすぐ、ゼロスフィリアは男の言っていた意味を理解した。1回切りの簡易転移陣の残骸があったのだ。恐らく緑帽子の男はこの、1つ白金貨1枚する簡易転移陣を使用してアジトに戻ったんだろう。
金さえ手に入った事が分かれば、怜の利用価値はなくなるから消される可能性があがるだろう。幸か不幸かこの簡易転移陣は屋内への転移は不可であり、目標地点から10キロ圏内の何処かにとばされるものであり、滅多に目的地点ぴったりに転移する事はほぼない。今はそれだけが救いだ。
ゼロスフィリアは焦燥にかられるまま、人通りがあろうとなかろうと、全力で走る。
ーーレイ、どうか、どうか、生きていてくれ。
失う恐怖と戦いながら、一縷の望みをかけて、一心不乱に走る。
1章のクライマックスになってきましたー!




