読書週間2(ゼロスフィリア)
ゼロスフィリアはここ最近の過ごし方と同様、今日も怜とギルドまで向かった後は、魔の森でバイコーンを放しつつ、そこそこの魔物を狩り、お昼頃に一度宿へ戻り一休みすると、夕方解体屋に寄り、前日分の買取報酬を貰いにギルドへ行く。
前日までと同じようにギルドへ入るとまだ混む直前のようで人はそこまで多くない。買取カウンターへ向かう前にフリースペースへ目を向けると、いつもの場所に怜は居なかった。
怜は席を外しているのだろうか? と思いつつ、先にゼロスフィリアの用事を済ます事にした。
買取カウンターで報酬を貰い、今度は視線だけではなく直接フリースペースへ向かうが、やはりまだいない。
もうすぐ一通り読み終わりそうだと言っていたから、先に帰ったのだろうか? 怜の性格からしたら、待っていそうだが。。。
ギルド職員に話を聞いてみる事にした。
「レイはいま席を外しているのか?」
「レイさんなら、お昼を食べに外へ出てから今日は見てないですよ」
「そうか。ありがとう」
毎日、午前中から午後まで本を読んでいる怜はギルド職員内でも珍しい人物として、そこそこ印象に残っている。冒険者にしてはギルド職員への対応も丁寧で、人当たりがよいのもあるだろう。
ギルドカードを首元から出して、確認するが特にメッセージも入っていない。ギルド職員への伝言もない。何やら胸騒ぎみたいなものがし始めたので、すれ違っている可能性を考慮に入れ、足早に宿へ戻ることにする。
♢♢♢
宿へ戻るとちょうどローレンスが受付に居たので怜の事を聞く事にした。
「ローレンス、怜は帰ってきてるか?」
「いえ、朝以来お見かけしてませんが」
「そうか。……もし戻ってきたら、宿で引き止めておいてくれ」
「かしこまりました」
ゼロスフィリアは念の為、部屋にも戻るが、ゼロスフィリアが出て行ったままである。怜の使っている部屋も覗いて見たが、特に変わりはないように見受けられる。
怜がいない事を確認すると、ゼロスフィリアはすぐに部屋を出て、厩舎や今まで怜と行ったご飯屋等を探す。
心当たりのある近場の店を見てもおらず、状況に変わりがないか一度宿へ戻り確認する事にし、これでいなかったら探す範囲を広げようと思っていた。
宿の門を潜るとローレンスが険しい顔をしたまま小走りで近寄ってきた。
「ゼロスフィリア様、先程夕方の郵便が届いたのですが、ゼロスフィリア様宛にお手紙が来ております」
何のかざりもない白い封筒に”死神ゼロ”とだけ書いてある。封筒を開けて素早く中身を見る。
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黒髪の坊やは預かった。
返して欲しければ白金貨100枚用意して、19時に貧民街の墓地へ来て、そこにいる緑の帽子をかぶった陰気なやつに金を渡せ。
忠告だが、下手に金を渡した奴を殺そうとするなよ? そいつが、墓地を出られたと判断するまで黒髪の坊やは解放しないからな。
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ゼロスフィリアは読み終わると思わず手紙を握り潰す。そして、怒りで、抑えていた魔力がうまく制御出来なくなり始めたようで、近くにいたローレンスの顔色が悪くなるが、ローレンスは特に指摘しなかった。
「レイが身代金目的で拐われたようだ。もし、明日の夜までに俺が戻って来なかったら、この手紙を持って警備隊へ行ってくれ」
「今警備隊へ連絡した方が良いのでは?」
「いや、大事にはしたくない」
手紙を受け取りながらローレンスはゼロスフィリアをうかがう。言葉の通り大事にしたくないのも本当だろうが、その犯人と事実ごと抹消したいのでは無いかと推察した。
警備隊へ連絡するとそれなりに対応はしてくれるだろうが、犯人を捕まえた際にこの領のルールで縛られてしまう。もし犯人と何処かの貴族が癒着していた場合、被害の事実をもみ消され、犯人は大手を振って街を歩く事も可能なのだ。
それにゼロスフィリアとしては、たとえ怜が無事に帰ってきたとしても怜に手を出した以上、見逃すつもりは毛頭なかった。
ーー現在の時刻は18:10
ゼロスフィリアは一度自室へ戻り、少し前まで着ていたフード付きのコートを羽織り、手紙に記載してあった墓地へ向かう。
俺の救いである怜は必ず取り戻す。怜から突き放されるまでは何があろうと誰に言われようと離れるつもりはない。
そう固い決意をして。




