初めてのパーティー結成1
怜の言葉でミーナは落ち着きをとりもどした。
いつもなら、一度失敗すると動揺から最後までグダグダになり、血気盛んな冒険者を怒らせてしまう事が多々あるのだが、怜の穏やかな雰囲気と言葉で今は不思議と落ち着き、気持ちを立て直す事が出来たので、業務を続行する。
「何か質問はありますか?」
「はい。パーティー結成するには何が必要ですか?」
「……パーティー加入ではなくてパーティー新規結成ですか?」
先程立て直した気持ちが、また驚きで崩れる。
昨日冒険者登録したばかりの初心者冒険者が、既存のパーティーに加入するのではなく、新しく結成しようとしているのだから。
これは研修中のミーナでも流石に普通ではない事が分かった。
が、怜の聞き方は”パーティーを結成したい”という希望ではなく、パーティーを結成する事は決定事項で、その上で何が必要かを聞いているようなので、この場合は”パーティー結成に必要な事”を答えるのが正解だろうとミーナは真面目に考え回答する。
「パーティー申請書がありますので、代表の方が必須項目を記載いただいて、所属人員欄に所属するパーティーメンバー直筆の名前をご記載ください」
怜はミーナから受け取った申請書をざっと確認する。
「パーティー名って必須ですか?」
「一応早めに登録していただきたいとは思いますが、パーティー名は後からの登録でも大丈夫です。それまでは仮としてメンバーの名前で呼ぶ事になりす」
「なるほど。あと、パーティーメンバーのランクには制約無いですよね?」
「特にありません。ただ、報酬の問題だったり、他者からの心象だったりいざこざが増えるようで、やはり近いランクの方と組まれる事の方が多いようです」
確かに、怜がゼロスフィリアと組んだら周りからは怜がゼロスフィリアを、利用しているように見えて心象は悪そうだなと思ったが、逆にその印象を利用するのもありだと思っている。この先も2人で行動する事を考えると、パーティーを組んどいた方が利点も多そうだし。
ただ、申請内容の件もあるし、もう一度ゼロスフィリアと話し合ってみても良いかなと思った怜は、その旨をミーナへ伝える。
「パーティーメンバーと相談したいので、申請書持ち帰っても大丈夫ですか?」
「あ、はい。大丈夫です。他に質問はありますか?」
「今は特にないです」
「それでは、ギルドカードの書き換えが完了しましたのでお返し致します。Eランクの登録料銅貨5枚よろしいでしょうか」
「はい。お願いします」
怜は銅貨5枚を取り出し、ミーナへ渡す。ミーナは銅貨を受け取ると、ギルドカードを怜に返した。
怜はギルドカードの内容が書き換わっている事を確認すると他にも何点かランクとは関係ない質問をし、回答を貰った後ミーナにお礼を言いゼロスフィリアの元へ行った。
♢♢♢
依頼完了報告の後、バイコーンを引きながらゼロスフィリアと共に宿へ戻り、ゼロスフィリアはそのままバイコーンの世話があるから怜は先に部屋へ戻っていて良いという事だったので、その言葉に甘え、ついでに先に風呂も入らせて貰う事にした。
解体屋で洗浄魔法はかかってはいるが、やはり外から帰ってきたら、少なくてもシャワーは浴びたい派だ。
因みに帰りの道中で、この世界の風呂事情を聞いてみたら、庶民は手軽に洗浄魔法で済ます事の方が多いそうだ。裕福な家であればシャワーは取り付けられているが、湯船まである庶民の家はほぼない。
ただ、公共の風呂施設がある為、湯船につかりたい時はそこを利用しているようだ。
逆に貴族の家には使わなくても、湯船はあるのが当たり前で、洗浄魔法で済ます方が少ないと言われているそうだ。実際は分からないが。
怜は、宿に小さいながらも湯船があった為、てっきり普通に風呂の文化があると思っていたが、スイートルームだからあっただけのようだ。
怜としては湯船があって嬉しいのだが、それで解体屋のエギルスにお金持ちに間違われたのかと納得した。
ーー実際にはエギルスはそれだけで、そう思った訳ではなく、怜の全体的な穏やかな雰囲気や丁寧な物腰も要因の1つだ。ただ、現代日本で一般企業の社員をそれなりの年数やっていれば、丁寧な物腰は誰でも身につくだろう。これは文化の違いからだろうが、お互い話す訳でもないのでこの結論に達することは無さそうである。




