邂逅3
案内されたのは、地下の居酒屋っぽい所。奥まった個室に通されたのは、話の内容を思ってなのか、逃げられにくいようにする為か……。
怜に逃げるつもりはないし、盗聴されても対処可能な内容しか話さない予定なので、支障はない。
席に着くなり早速メニューを見てみるものの、読めるが訳の分からない内容ばかり。
「……。(パゲラの素焼きってなんだよ)
何か適当に私の分も頼んでください。」
分からないのでフード男に丸投げした。
「あ、飲み物は水でお願いします。」
こちらの要望も忘れず伝えておく。
フード男は眉間に皺を寄せながらも、店員を呼びよく分からないものを色々注文してくれた。
やはり面倒見が良さそうである。
「……」
「……」
両者しばし無言が続いた中、飲み物と料理が運ばれてくる。その間フード男の視線はずっと怜へ向いたまま。
何のお見合いなんだ?
そう思いつつも、一通り揃ったようなので、
「いただきます」
と、こちらもフード男を見てから手を合わせて食べ始める。
サラダ、焼き魚、肉、煮込み料理、つまみ等一通り頼んでくれたようで、食材は分からないが少しずつ摘んでいく。特に危険をつげるような食べ物は無さそうなので良かった。
俺が食べ始めたのを見てフード男も食べ始めたので、相手も話しかけてこないことをいいことに、こちらから気になった当たり障りのない事を聞いてみる。
「屋内なのに、フード取らないんですか? 手袋もしたままご飯って食べ辛くないですか?」
と言った所、目を見開いてこちらを凝視している。
……あれ? いきなり地雷ワード踏んじゃった? 当たり障りない内容選んだはずなのに……と顔には出さずに考えていたら
「……これは耐魔制御が掛かった衣服だ。外してお前は耐えられるのか?」
と言われた。
……”タイマ制御”
“大麻”? え? 薬中なの? 大麻の匂いを制御してるの?
それとも”タイマー”……時間な訳ないか。
後は”退魔”かな。ん? 俺悪魔とか思われてる? でもさっき”死神ゼロ”って言われてたから悪魔とか霊とかそーいうのが居る世界なのか? でも外したらフード男に影響があるんじゃなくて、俺の方に影響があるような言い方だし、霊的なものでも呼び寄せてしまう体質なのかな? 良く分からない。
ので、分からない事は聞いて体験してみるに限る。
「あなたに影響がないのであれば、外してみていただけますか?」
フード男は怪訝な顔をした後、じっと俺の顔を見る。
俺が何も動かず見つめていると、不意に壁に視線をやり何事か呟く。と、何となく部屋の空気が変わったように感じた。
それからフード男はフードを下げ、こちらを見る。
俺が反応しない事を確認すると、次に右手の手袋を外してこちらを見る。
俺が反応しない事を確認すると、今度は左手の手袋を外してこちらを見る。
俺が反応しない事を確認すると、フードの上着を脱いでこちらを見る。
それでも俺が反応しない事を確認すると、ゆっくり左耳だけに付いているイヤーカフを外してこちらを見る。
……うん。なんだろ。フード男君はワンコかな?こちらの反応を伺いながら、恐る恐る近づいてくる臆病な犬みたいで可愛い。
……別に華奢でもないし、明らかに成人は過ぎてる男性なんだけどね。
確かに、徐々にさっきフードの有無によって違うように感じた気配というか存在感? が段々大きくなっているような気がする。でもそれだけ。別に大麻の匂いなどもしないし問題ない。
フード男はしばらくこちらの反応を伺った後、席を立ち俺の方へ歩いてくる。
じっと、俺を見つめた後、目を伏せ躊躇いながらも右耳につけたピアスをゆっくり外し、フード男は俺を見つめた。
何度も捨てられ心に傷を負ったワンコが、今度も愛されない事なんて分かっているのに、それでも一瞬でも愛を求めてしまう本能を止められない。
そんな目をするフード男に、
俺は思わず席を立ちゆっくり近づき、
そっと抱きしめて
「大丈夫だよ」
と囁いた。
頭1つ分高いフード男を見上げると、信じられない物をみたという目で、俺を見ている。
どちらも動かず、時が止まったかのように感じさせる中
フード男はこちらを凝視しながら
一筋涙をこぼした。
……美形って凄いね。鼻水垂らして泣かないんだね。思わず守ってあげたいみたいな母性本能? 擽られるし、絵になるってこーいうこと言うんだと実感したよね。
そして、思った。
ちょっと雰囲気に流されたけど、……なにこの超展開。
あまり良好ではない雰囲気の中ご飯食べ始める→俺の一声をきっかけに服脱いでアクセサリー外す→近づいてきた→なんだか寂しそう→思わず抱きしめる→美形が泣く←イマココ




