冒険者登録講習会1
やっと冒険者の話!
怜は珍しくワクワクしながら、街を歩いていく。
街並みを見るのは初日以来であり、この10日間で怜は”せっかくの異世界楽しもう”と開き直っていた。
それに初日と違い、隣にはゼロスフィリアがいる為、何かあってもフォローしてくれるだろうと考えていた。
冒険者登録講習会は当然冒険者ギルドで行なっている。このムスタ領にはムスタ領ギルド本部と、東西南北の4つの支部がある。
講習会は何処のギルドでも大丈夫という事で、今は泊まっていた宿から1番近い徒歩15分で行ける南支部ギルドへ向かっている。
今日は登録だけという事で、お互いラフな格好だ。ゼロスフィリアも、身に這わせる耐魔結界が使えるようになったし、怜も流石にスーツで街中を歩くわけにはいかないので、ゼロスフィリアに何着か適当に購入してきて貰った物を着ている。
講習会後、実際自分で見てちゃんとした服や装備を購入しようという事になっている。
ゼロスフィリアのラフな格好にロングソードという組み合わせに、怜は若干の違和感を覚えつつも、この世界では標準なのかもしれないと思い直す。
「レイ着いたぞ」
ゼロスフィリアの言葉に視線の先を辿ると、ファンタジー世界の冒険者ギルドそのままな感じの建物があった。
やはり栄えているらしく建物自体が大きい。そして、まだ中に入っていないのに賑やかだ。
木製の扉を開けるとこちらも物語に登場するように左側正面には受付カウンターがあり、右側正面には壁いっぱいに依頼票らしきものが貼ってあった。
ただ、右側のスペースにテーブルや机はあるものの、お酒を売っているような所は無かった。
ひとまず受付をしようと、怜だけ適当に空いてるカウンターへ並ぶ。
うさ耳の女の子がいた。
獣人がいる世界なのね。後で時間がある時にでも、この世界の”種族”についてゼロスフィリアに聞いてみようと思い、うさ耳の女の子に話しかける。
「こんにちは。冒険者登録講習会に参加したいのですが、こちらでよろしいですか?」
と、怜が話しかけるとビクッとしてから対応してくれた。
「だ、大丈夫です。お名前と年齢だけお聞きしてよろしいですか?」
「レイといいまして、年齢は28歳です。」
怜の言葉にうさ耳の女の子は首を傾げつつも、手元のボードに記入した後、
「まだ、開始までは時間が有りますので、室内でお待ちください。時間になったら呼びますので、それまで自由にお過ごしください」
と言われたので、ゼロスフィリアの元へ向かう。
講習会の前にギルドの雰囲気や依頼内容が見たくて、早めに来てたのだ。そして、隣にはベテランがいるので、勿論解説もしてもらう予定である。
それにしても何だか怜とゼロスフィリア2人への視線が多いようだ。
「フィー君、何だか色んな人に見られてるみたいなんだけど、何でかな?」
「さあ? レイが珍しいんじゃないか?」
と、ゼロスフィリアは全く興味無さげな回答をする。
……確かに、様々な人種が集まっているこの街で黒髪はちょこちょこ見かけるのだが、日本人特有の黄色の肌に黒い瞳のセットは見かけない。
珍しいのかな? それにしては、フィー君にも視線が集まってるんだけど。
と、思いながらも、まぁいいかと気を取り直して、予定通りゼロスフィリアにギルドの説明を求める。
「右壁面が依頼ボードだ。依頼はFランクからSランクまでありランクがあるものはランク毎に依頼票が並んでいる。」
……この辺はアナログなんだなと思っていたら。
「依頼検索用の端末も2台あるが、魔力を持っていかれるから、冒険者には敬遠されがちだな。実質ギルド職員と指名依頼を考えてる依頼者しか使っていない。」
と、ボードの端に所在なさげに置いてある端末を指挿しながら言う。
依頼検索時に消費される魔力は昔の端末と違ってそこまで多くないが、冒険者からすると依頼中の魔力切れは生命の危機に直結する為、基本的に魔力を使用しなくて良い場面では魔力を温存する傾向にあるようだ。
また、端末導入初期、その珍しさからこぞって冒険者が使用した際、その魔力消費量の大きさからギルドで倒れる者が続出して以来、縁起が悪いと思われていることもある。
怜はゼロスフィリアと共に依頼ボードの前に行き、どんな依頼があるのかざっと眺める。
怜は全く分からないが薬草の採取、魔物の討伐依頼のようなファンタジー世界にありそうな依頼から、護衛、ペット探し、引越し手伝い、掃除代行、子守代行、浮気調査等元の世界の便利屋のような様々な依頼も出ていた。
最悪、闘えなくても大丈夫そうだと判断して、端末も触ってみようかと思った所に
「冒険者登録講習会への参加希望の方は2階のC会議室へお集まりください」
と、召集がかかった為断念する。
怜は少し残念そうにしながらも、この後のゼロスフィリアの行動について確認をとる。
「……始まるみたい。講習会の間フィー君はどーする?」
「そこのフリースペースで待ってる」
と、言って机や椅子がある箇所を指差した。
「分かった。じゃ、また後でね」
怜はゼロスフィリアへ声をかけた後、受付カウンターの向かいにある階段を上り、指定の部屋へ向かった。




