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邂逅1

「ん……」


 なんだか全身が痛い。

 そっと目を開けると目の前1.5メートルほど離れたところにレンガの壁があり、男が足を地面に投げ出し背中で寄り掛かっているのも似たような壁なのだろう。

 少し薄暗くて人通りがないここは恐らく路地裏かなと推測し、体に異常がないか確かめていく。


 取り敢えず、いつもしてる銀フレームの眼鏡に支障はなく、全身黒の防刃スーツに包まれている体にも特に大きな傷はないようだが、全身打ち付けたような痛みがある。


 ゆっくりとその場を立ち上がりながら、直前までの出来事を振り返る。


 あれはーー


 日本で同時多発テロ予告があり、その対策本部特別指揮官補佐ーーという名のただの雑用ーーを命じられた中肉中背黒髪で何処にでもいそうな優男風の男、日下部(くさかべ)(れい)は避難済みのビルの爆発物処理がひと段落したものの、何かのひっかかりを覚え近くの公園の公衆トイレに向かった所、爆音と衝撃に体が吹き飛ばされて今に至る事を思い出す。


 近くの住民は既に避難済みの為被害は無かったと思うが、なぜ自分はこんな路地裏のような場所にいるのか疑問だ。

 病院だったり、近くの公園ならまだ分かるが、何か体だけを路地裏に置いて側には誰も居ることが出来ない状況にでもなっているのだろうか。


 全身は怠いままだが、立つのにも支障が無かった為、そっと路地裏から賑やかな方へ近付いてみる。


「……」


 路地裏から大通りを見た光景に思わず片手で額を覆ってしまう。


 そこは、中世または近世ヨーロッパともいうような建物が並んでおり、色鮮やかな髪色(地毛のように見える)、現代とは異なる服装は明らかに怜の知る日本では無いことがうかがえた。


 いつまでも固まってては何も変わらないと心に区切りをつけ、まずは情報収集を行う。


 上着を脱いで白ワイシャツにすれば、少しは目立たにくいだろうと考え、上着を脇にかかえ気配を薄くし町中を歩き回る。


 表通りを散々歩き回り、聞き耳をたて情報収集をして分かったことといえば、言葉は口の動きは違うのに言ってる事は分かり、字も読む事は出来そうだが、実際書くのは出来なさそうだということ。


 お金もなければ、身分を証明するものもない今、何かしらの補助がなければ表で過ごすのは無理かなとため息を付き、案内人を見繕いに薄暗い通りを歩く。


 人相、雰囲気から人の性格・趣向を読む事が得意な怜は、さりげなくすれ違い様に確認しながら路地裏を進んで行く。


 ……まぁいざとなれば誰でも良いんだけどね。でも体痛いし、面倒臭い事はなるべくしたくないな。


 大通りからはどんどん離れて日当たりが悪い通りを進む。


 ……でもそろそろ決めないと、日が暮れたらもっと面倒くさい……


 と、考えていた所に厳しい顔をした男5人に囲まれ、一際体格の良い顔に傷のある男が話しかけてきた。


「兄さん迷子かい? 道案内してやろうか?」


 こちらの人達は皆んな背が高いなぁ。顔の傷がしっかり残ってるのは処置が遅かったのか、こちらの医療技術が進んでないのか、庶民じゃ手を出せないほど医療費が高いのか……


 と、つい考え込んだのを怯えと捉えたのか、上から下まで全身を眺めた後、首を傾げニヤニヤしながら一歩近付いてくる。


「どうした坊ちゃん?」


 坊ちゃん……28の男が坊ちゃん……坊ちゃん呼びに思考が停止仕掛けたものの、返事を返す。


「はい。ちょっと(異世界に? )迷子になってしまったようで。(この世界について)案内していただけますか?」


「いーぜー。

お付きの者が迎えに来るまでアジトに案内してやるよ」


 と、答えると同時に囲っていた男のうちの2人が両サイドをガッチリ固めてきた。


 ……どうやら身代金目的の誘拐にするらしい。

 まぁ、確かに黒のスーツは仕事用の為良い品だし、革靴も履いてるからここの庶民っぽい服装ではない事は確かだが、坊ちゃんは無いわー。やっぱり東洋人は幼く見えるというやつかな。


 と、思いつつ大人しく男たちに連れられて10分程歩いていた所。


 ふいに後ろから


「おい」


 と、不機嫌そうな声がかかる。


 振り返って見えたのは、フードで顔は見え辛いが、スラットした腰にロングソードだろうか? をおびた長身の男。

 声の感じからすると同じ年代位だろうか。


 すぐ様男たちが俺に貼りついてきて警戒を滲ませながらも声をかけてきた相手が1人と見るや返事を返す。


「コイツのお付きか? 返して欲しければ金を用意してろと主人に伝えろ」


 俺の首には漏れなく、あまりキレが良さそうには見えないナイフが当てられてる。


 これで切られたら痛そうだなぁとぼんやり見ていたら、フードの男からの強い視線はそのままにフードが外される。


 そこには銀髪に菫色の瞳、顔立ちは整っていて眉間の皺と近寄りがたい危ない雰囲気を醸し出していなければ、さぞや女性にモテただろうなと思うような美形の剣士がいた。


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