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第20話 目覚めた王子達


 目を覚ましたセリアは、ラナハルト達と会い、あの空間での出来事について確認しながら4人の王子達が眠る部屋へと急ぐ。


「本当に不思議だったけど、やはりあれは実際に起こっていたことだったんだ……」

「妙にリアルだけど夢かもしれないという疑いもありましたよね」


 起きた時には半信半疑だったらしいピスナーとトラスがそうつぶやく。


「じゃあ、後はピースを待つだけだな」


 捕えられたキリエラは、メリー王国でまだ次の王が正式に就いていないこともあり、周辺国をまとめる立場でもあるカトラスタで裁かれることとなった。アリストの王族でもあるはずのキリエラだが、かなり昔に王家からは離れており、それを証明できるはずの息子であるバラクもカトラスタの牢に投獄されている為、セリアもカトラスタでの裁判に同意した。


 王子達の眠る部屋へ入ると、聞きなれた声がセリア達を迎える。


「兄上、セリア様……」

「兄上、姉上! お久しぶりです!」


 ベッドに腰掛けたままのガーラントとリースミントが、ほぼ同時にそう言い、こちらを驚きの表情で見つめている。


「お前達……良かった……」


 ラナハルトが安堵の表情を浮かべてそう言うと、ガーラント達が不思議そうな顔をする。


「兄上、私達は一体……」

「その前に!」


 突然ガーラントの後ろから、遮る声が聞こえて皆がそちらを向くと、ガーラントの逞しい身体の影からひょこっと顔を出した者がいた。


「あ、フォリアルト、そんな所にいたのか!」

「そんな所ではありませんよ~兄様~ああ久しぶりの兄様だぁ~」


 目をうるうるさせてそう言った少年は、リースミントの黄緑色の髪を濃くしたような髪を長く背中まで垂らしている。


「そ・れ・で、兄様、その世にも類い稀な美女中の美女はどなたなのです? 兄様の何なのです?」

「婚約者だ」

「こんにゃくひゃあ――!!」


 何か美味しそうにも聞こえる言葉を絶叫すると、フォリアルトは後ろのベッドへグニャンと倒れてしまった。


「では、次に私がご挨拶させていただいてもよろしいでしょうか?」


 倒れたフォリアルトの更に後ろからまた別の青年が現れ、セリアは驚く。その青年はラナハルトやガーラントと同じ濃い金髪を肩まで垂らし、優しそうな笑顔を湛えている。起きたばかりとは思えないしなやかな動作でセリアの側まで来ると、胸に手を当ててやや前かがみになった。


「私、第3王子ベルナルトと申します。お美しい姫が将来の姉上となること、とても嬉しく思います。どうぞ、仲良くしてくださいね」


 そう言ってほほ笑んだベルナルトに、セリアは中性的な美しさを感じて思わず見惚れていた。そして、ベルナルトもまた、近くで見たことで一層明らかになったセリアの美しさに、眩しいと思うほどの神々しい雰囲気を感じていた。


「ええ、こちらこそ、よろしくお願いしま……」

「ベルナルト、お前の微笑みは禁止だ……」


 ラナハルトがそう言うと、ベルナルトはクスッと笑い、茶目っ気たっぷりの目でラナハルトを見る。


「兄上が女性の前でそのような物言いをなされるとは、私の視察中に色々あったのですね」

「そうだよー、ベルナルト兄上。僕が教えてあげるよ」

「おい、リースミント!」

「いいでしょー? あれは、僕がナイディル王国を視察中のことだったんだ……」

「やめろ!」


 その後、無理やり話を切り替えたラナハルトが、4人の王子にこれまでの経緯を説明した。


「死にそうな僕を助けてくれた兄様とセリア姫……ああ、なんてお似合いなんだぁ~そして2人が美しすぎて、僕の入る余地が~」

「あー……姉上、フォリアルト兄上は、ちょっとこう……かなり……」

「個性があるのだ」


 絶妙な言葉でリースミントの発言をフォローしたガーラントに、皆の賞賛の目が集まる。


「しかし、セリア姫のその能力がなければ助からなかったでしょうね。チッチや帝国のアイーダ皇后、そしてピース王子にもお世話になりました」


 ベルナルトが考え深げにそう言うと、皆も無言で頷く。



 数日後、キリエラを連行し到着したピースは、カトラスタの城で大勢に感謝と共に迎えられた。皆の賞賛の言葉に照れながらも胸を張ってピースが言う。


「これはもうさ、セリアちゃんを妻に迎えてもいいくらいの働きだよね?」


 その途端、皆がシーンとなる。

 その沈黙を破ったのはラナハルトだった。


「それはない」

「へ? なんでラナがそう言うのさ、ラナは帝国の姫と婚約しただろう?」


 セリアはその瞬間、婚約発表の時の情景が頭を過る。そして「あ、私あの時はベールを被っていたんだわ」と思い出す。


「ああ。セリアがその帝国の姫だ」

「はぁ? へ? ぇええーっ!! うそ?」

「本当だ」


 ピースの目は点になり、時が止まったようになる。しかし、徐々にその顔は平和な安らぎの顔になり――。


「ラナ、問題ありません」

「な、なんだ、なんか気味が悪いな」

「法律を改正するのです……一妻多夫制……そう、僕はカトラスタが一妻多夫制を導入することを勧める! 早い者勝ちなんてダメなのです!」

「早い者勝ちじゃない……運命だ」

「運命は変えられるものだよ!」

「お前に変えられてたまるか!」

「ラナ、君はいつからそんな狭量な男になったんだ?」

「お前の前では狭量でいい!」

「ああ~ラナハルト兄様とピース王子の美しき友情に、僕の入る余地はない~……」

「「友情じゃない!!」」

「あ、フォリアルト王子から鼻血が出てるわ!」

「姉上、大丈夫だよフォリアルト兄上はほっといて。いつものことだし、ちょっと血を抜いておくくらいがいいんだって母上も言ってたし」


 セリアは困惑しつつも、そんな皆の様子を見てふふっと笑う。初めて会った王子達だったが、自分をすっと輪の中に入れてくれていることに安心感が湧いてくる。「私、ここの皆さんと家族になれるのね」何の恐れもなくそう思えることに、セリアは感謝するのだった。皆が向けてくれる笑顔に、心がほっこりして、セリアも満面の笑みを向けていた。



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