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第18話 対決


 黒い靄がかかる中、セリアの背後で気味の悪い笑いを浮かべた老婆は、目を細めるとセリアへ一歩近づいた。


「私か? キリエラなえぇ~、ペルガーの祖母と言えば分かるなえぇ?」

「ペルガーの……お祖母様……」


 セリアはその老婆の額に黒い模様があるのを見て、それがキリエラなのだと確信する。


「なぜ、ここにいるのですか? これは私の夢ではないのですか?」

「夢……まあ~少し似ておるが、人の精神が集まる場所なぇ」

「ここに寝ている4人は、貴女と似たような模様が額にありますね。何か関係があるのですか?」


 セリアが心にぐっと力を込めてそう言うと、キリエラは細い目を更に細めた。


「ああ~嫌なえぇ~、このキリエラの術にかかりもせずに、それを問うとは本当に嫌なヤツなえぇ~」


 キリエラがそう言うと、周りの靄が一層黒さを増し……セリアは何かに胸を押さえつけられているような圧迫感を感じる。


「うっ……」

「ふふ、この世界で私に会って効かぬはずはないなえぇ~」


 セリアは苦しさに耐えられず膝を着く……と、その時チッチのさえずりが一段と大きくなり――それと共に胸の圧迫感がましになる。


「何なぇ?! この耳障りな音は!」


 そう言うと、キリエラはキッとセリアを睨んで近づいて来る。見ると、その手にはナイフのような物が握られていた。あっと思った瞬間、キリエラはその手をセリアへ振り下ろす――。


 咄嗟にその腕を下から止めたセリアだったが、後ろには4人の王子達が眠っていて、もう1歩も下がれない。キリエラの力は老婆とは思えないほどに力が篭っており、いつまで持ちこたえられるか分からなかった。

 セリアは余裕がない中、心の中に浮かんだ名前を呼ぶ――。


……ラナ――!!……


 キリエラが渾身の力で振り下ろす手に握られたナイフが、セリアの頭の上に迫る。

 その時だった――。


「ぐあぁ! なにな……ぇ……!?」


 急にキリエラは後ろへ仰け反り、床へ膝を着いた。そして、その後ろに驚愕と怒りの入り混じった顔で立っている青年を見つけて、セリアが叫ぶ。


「ラナ!!」

「セリア、大丈夫か?! ……なんだここは? 何が起こっているんだ?」

「説明は、後でするわ! 気を付けてラナ!!」


 起き上ったキリエラが再びナイフを振り下ろすと、ラナハルトはそれを躱してキリエラの腕を後ろに捻りあげた。


「ぐぁあ! 痛いなえ!」


 苦痛に顔を歪めるキリエラの手からナイフが落とされると、セリアはそれを素早く拾う。そして、手短にラナハルトに説明し、それを聞いたラナハルトがキリエラを睨む。


「すると、これが全ての元凶のようだな。やはり呪詛の類か……おい、弟達を元に戻せ」

「無理なえ~、方法は知らないなえ~」


 腕を捻りあげられた状態のままキリエラがニヤリと笑う。セリアは、その顔が嘘をついているように感じたが、訊き出すのは難しいように感じる。思念も試してみたが、拾えた思念は恨み辛みの念ばかりであった。


「呪詛の解き方……」


 そうつぶやいたセリアは、帝国で読んだ『諸外国の風習―禁忌と謎―』の本に書かれていたことを必死に思い返す。


「呪詛は……あっ、術者の呪印を消すんだったわ!」

「この額のやつか?」

「ええ……でも、この身体は実体じゃないわ……」

「実際の身体の方か……でも、こいつが目覚めて逃げ出したら……」

「確か、術者はその術中に精神体に干渉されたら戻れないはずだわ」

「そうか……じゃあ、俺に考えがある。ちょっと癪だが……。セリア、ここでも思念は飛ばせたな?」


 それを聞いてセリアは思念での会話に切り替える。


……うん、できるわ……

……よし。じゃあまずここへ助っ人を呼びたい。こいつを押さえておける者がいい……

……分かったわ、ちょっと待ってね……


 セリアが意識を集中してしばらくすると、3人の見知った顔が現れた。


「ピスナーかトラスが来るだろうと思ってはいたが……アイーダ皇后まで……確かに思念に距離は関係ないだろうが、よくこんな素早く3人も呼べたな?」

「ええ、私の訓練の成果が出て良かったわ!」

「しかし、皇后にコイツを押さえていてもらうなど……」

「うふふ、多分お祖母様が一番慣れていらっしゃるから大丈夫よ」

「それはそうだが……」


 ラナハルトとピスナーはアリストでマエロ元宰相がアイーダの鞘で吹き飛ばされた時のことを思い出す。

 そして、セリアは新たに来た3人へも状況を説明した。


「ああ、こやつがサリーナの手紙に書いてあった者か……ふん、やることがどこまでも陰気だな。どれ、かしてみろ」


 そう言うと、アイーダは精神体でも差している腰の剣の鞘を、キリエラの腕に絡ませて捻りながら地面に伏せさせると、その背中へ足を乗せた。


「ふっ、老婆とはこれほど軟弱なものか? まあこれくらいやっても精神体なら問題はあるまい」

「セリアの祖母殿は……本当に勇ましいな」

「ええ、私の憧れなの!」

「えっ、セリアもあんな感じになりたいのか?」

「ははは、王子よ、心配はいらぬ。セリアは心優しきゆえ、なりたくてもなれまい」


 それを聞いたラナハルトがほっとした顔をし、4人の王子の側についてくれているピスナーとトラスはクスクス笑う。


「あ、それでラナ、次はどうすればいいの?」

「ああ、それだが……ふぅ、あんな奴に頼みたくはないのだが……」


 そう言うと、ラナハルトはセリアに、もう1人へも思念を飛ばすように頼んだのだった。



いつもお読みいただく皆様、どうもありがとうございます!


以前、現実世界で河童が朝起きて来て、家族にその日見た夢の話をしていましたら、我が弟が途中からその夢を私に代わって話し始めたことがありました。

「えっ、なんで知ってるの?」

「僕もその夢見てたから。夢の中で、多分同じ夢見てるなってなんとなく分かったよ」


この驚愕の出来事があってから、意外とファンタジーは異世界だけでなく現実にも存在するのかも?! なんて思っています(笑)


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