凱旋
この日、厳龍は、パールハーバー→マリアナ諸島→沖縄と、続いた激戦地から、およそ4ヶ月ぶりに呉基地に戻って来た。
大本営も、流石にこれだけの活躍をした、厳龍を極秘裏にしておく事は出来ず、日本国民は様々な憶測を立てて、このサブマリナーズを一目見ようと必死であった。
全国に帝国海軍の大きな港は、限られた数しか存在しないものの、あたりくじを引いたのは、呉にいた群衆であった。もちろん詳しい事はよく分かっていないが、とりあえず、旭日旗を大手に振って、帰って来た連合艦隊の凱旋を迎えた。
「こうして見ると勝利というのも悪くないな。」
「ヒーローではないけれど、凱旋している感じが良いな。」
「憎きアメリカに一矢も二矢も報いてやったな!」
「呉はこんなにも熱狂的な街になるんだ。」
「こりゃ、大スターだな。でも潜水艦だから俺達の事は見えないな。」
「あーあ。どうでもいいけど疲れた。呉基地の広いベッドで眠りたい。」
「明日もまたこの厳龍に乗っていたくはないな。」
「月月火水木金金ってのは堪えるな。色んな意味で」
「外出できるのかな?まぁ、そのくらいは許してもらいたいなぁ。」
「あーあ。腹へった。もう厳龍の飯は飽きたぜ。」
「こんなにも嬉しいのは、テストで百点取った時以来だぜ。」
「階級少しでも上がると良いな。でも下がいないから変わらんか。」
「下っ端は永遠に下っ端何じゃね?」
「平和ってのは戦って掴みとるもんなんだなぁ。」
「明日があるか分からない。この感覚は大切だ。」
「天下をとっても暮らしは、直ぐには良くならないんだな。」
「平時こそ有事のような緊張感が必要だな。」
「こんなにも空気が美味いとは思わなかった。」
「サブマリナーにとって耐え忍ぶってのは大切だ。」
「早く家に帰りたいと思ったが、それは無理だな。」
「勝って兜の緒を締めよ、か。確かにな。」
これから日本がどうなるか?それは、厳龍乗員には分かりかねる事だった。




