吉と出るか凶と出るか
厳龍の全長は84メートル、水上速力は13ノット、推進速力は20ノットで、定員は65名である。
533㎜魚雷発射管が6門×2門あり、89式魚雷や、ハープーン級対USM対艦ミサイルが使用可能である。
厳龍は、この世界に来て以来、それら最新鋭の魚雷や、ハープーンの代替え品として、43式酸素魚雷や47式魚雷という、この世界にあった魚雷を、兵器開発局に依頼して、厳龍に搭載可能なように改造して、緒戦を戦った。
厳龍の優れた機動性や、隠密性が発揮されるのは、こういった強力な雷撃が出来るからこそ、際立ってくるのである。
それがなければ十手のない忍者も同じ事。当然の事ながら、アメリカ海軍はおろか、1949年の時点では、当然の事ながら厳龍は世界最強のsubmarineだった。
そして、現代(2012年現在)においても、原子力潜水艦の一部を除けば、性能においても、トップクラスの位置にいることは間違いなかった。
日本の海上自衛隊が、対潜水艦作戦能力に優れているのは、P-3C という強力な探索機体を持っているからだけではない。
厳龍のような、高スペックな潜水艦を何隻も保有している事で、日本の対潜水艦作戦能力が高水準にあるのだ。
その厳龍にあっても、この時代の魚雷には、手を焼いていた。何しろ、狙われたらひとたまりもないからであり、高性能レーダーがあっても、100発中3発、率にして3%当たる確率があった。
とにかく素早く動く事で、敵の雷撃をかわして、敵に一撃を加える。それが、厳龍のスタイルだった。それを可能にしていたのが、前述の4基の非大気依存推進装置
AIP (Air-Independent-Propulsion )
と、2基のディーゼル機関(ディーゼルエレクトリック方式)であることは、厳龍の乗員なら、誰でも知っている常識だった。
日本海軍も、とんでもない時期に、とんでもない兵器と人員を抱える事になってしまった。それが吉と出るか、凶と出るかそれは、まだ分からない。




