磯村中尉と澁谷伍長
そんな事になっているとは知らず、沖田は可愛いがっていた磯村中尉と、澁谷伍長らと厳龍艦内の食堂で食事をしていた。
「おい、腹が減っているからといって、艦長より先に飯を食うとは、どういう事だ?」
「すみません。艦長がいらっしゃるとは思っていなかったので、つい。」
「僕なんて完食しちゃってます。苦笑」
「冗談だよ。ほら冷めちまうぞ。ついでに俺のも半分やる。俺がそんな事言うような男に見えるか?」
「見えなくもないです。」
「おいおい、そりゃないだろ。」
「艦長は人間として、百点だと思います。」
「さすが、澁谷伍長。分かってるじゃないか。」
「抜け目ない奴だな。艦長の評価上げようとして。」
「それはないですよ。磯村中尉のように打算的じゃないですし。」
「それより今夜は随分大きな戦いがあったみたいだな?」
「私は見ておりませんが、潜望鏡で敵艦隊がなくなるのを確認したと、記録には残ってましたけど。」
「自分は、日本海軍が圧勝したと聞いています。」
「澁谷伍長、戦場ではそう言う情報の出所も、確認しなくちゃならんぞ。」
「しかし、どうやったら元の世界に戻れるのでしょう?」
「タイムスリップ出来る乗り物なんてある訳ないし…。」
「まぁ、最悪この世界で骨を埋めるつもりで戦う事だな。」
「だとすると、自分はこの世界で結婚する事に?」
「自分もそうなりますね。何か複雑だな…。」
「まぁ、そんな事より、この世界で生き残らないと、話しにならん。」
「そうですね。一戦必勝、死んだら終わりです。」
「アメリカ野郎に魚雷をぶちこまれて死ぬのだけは嫌だな。」
「幸いな事に、この世界で厳龍を倒せる魚雷はない。」
「確かにそうですね。ホーミング機能のない魚雷なんて雑魚っすよ。」
「でも、ここの世界の時計だって進んでるんだし…。」
「そうだよな。いつか我々を倒せる兵器が登場するかもな。」
「それより、今日は疲れました。急いで呉に戻りましょう。」
「そうですね。こんな狭い艦内で寝るより、丘の上で寝たいわな。」
結果的に、厳龍の情報は流出してしまった。だが、日本海軍としては、それに目をつぶって余りある戦果が、あった事に疑いの余地はなかった。




