運命の神様
「いたんですか?びっくりさせないで下さいよ。」
「そんなつもりはない。」
「艦長の今後の戦況の見通しをお聞きしたいです。」
「自分も是非知っておきたく存じ上げます。」
「何も確証があるわけではないが、これからはもっと厳しい戦いになるぞ。」
「どのあたりからそう感じますか?新兵器とか?」
「はたまた日本海軍の衰退とか?」
「いや、違う。」
「きっと敵が、我々の存在に気付いて何か対策を立てていると。」
「ご名答。流石は下士官ながら艦内一の切れ者戸村曹長。」
「それはつまり、私達を沈めようと画策していると?」
「そして、厳龍のいない日本海軍なら勝てると。」
「極めつけは、日本を占領したいと。」
「お前ら、よく分かっているじゃないか。全部その通りだ。」
「アメリカ海軍の事だ、きっと我々を特別な呼び方で呼んでいるはずだ。」
「リトルドラゴンとかかな?」
「いや、スパークとか?」
「井浦少佐は、ネーミングセンス0ですね。コモドラゴンとか?」
「戸村曹長も、人の事は言えんぞ。アメッポは、どうやら我々を"ドルフィン"と呼んでいる。」
「イルカですか?そう言えば、俺達の潜水艦貴章はドルフィンマークって言いますもんね。」
「潜水艦は、急浮上、急降下をイルカのように繰り返すからな。」
「きっと敵さんも、あまりに早いイルカなんでびっくりしてますよ。」
「ドルフィンマークは関係ないが、米内海軍大臣がそう言ってた。」
「我々がマークされている事を知って、大本営は投入しているんですね。」
「だとしたら、かなり無謀な事だよな。普通だったら。」
「特攻とかを平気でやらせるんだぜ。驚く事じゃねぇ。」
「俺達は雇われの兵士だ。仕方あるまい。」
「元いた時代に戻るか、ここで生を全うするか。」
「どちらにしても、我々は勝つしか生き残る道はない。」
「敵はうようよいるが、きっと我々の本当の敵は運命の神様ですね。」
「とんだ運命の神様の元にたどり着いてしまったものだ。」
「やがて訪れるであろう、過酷なmissionに備えて、牙を研いでおけ。」
沖田の言葉は、この戦いがこのまま、無事に終わる事はない。そう言った複数の意味のある言葉だった。




