食えるうちに食っとけ
厳龍を動かしているのは、何も幹部だけではない。
戦いを終えて、やっと食事にありつける様子は、厳龍を動かしている隊員の現実を表していると言える。
この時間は、倉井一等兵と草原軍曹と村井軍曹と飯田曹長が、食事をしていた。
兵隊の食事の順番は、階級によって決まる。食事をするのが遅いのは、階級の低い者と相場が決まっていたのだ。
「倉井一等兵、夕飯いただきます‼モグモグ、パクパク、ゴクン。」
「すげぇ音出してるよ。よっぽど腹が減ってたんだな。」
「全く、下の者の苦労も知って欲しいもんだよな。」
「まぁ、嘆くな。軍隊は星の数(階級)で決める所なんだから。」
「今日のカレーは、美味ですね!ああ、今日もか…。」
「いいよな。若いってのは。俺も倉井一等兵の年に戻りたいよ。」
「戻ったところで何か出来る訳ではなかろう。」
「良いじゃないか、想像するのは自由だ。」
「自分は、逆に早く草原軍曹や、村井軍曹の年になりたいです。」
「若い奴はよく言うよな。早く大人になりたいって。」
「俺もそんなこと言ってた気がするなぁ。」
「食えるうちに食っとけ。これは兵隊の鉄則だ。」
「曹長ともあろうお方が、何を今更って感じですよ。」
「確かにな。良い年こいて説教なんて、今時流行らねっすよ。」
「バカ‼あんまり調子に乗ると怒らせちまうぞ。」
「お前らの休暇・外出の管理は俺がしている事を忘れるな。」
「それを言われると弱いんですよね。マジで。」
「うわー、卑怯だな。そりゃないっすよ曹長。」
「だから言ったろ、調子に乗るなって。」
「職権乱用は、私のポリシーとしてはしたくない。」
「肩揉み20分券×一週間分でどうでしょう?」
「背中を風呂で流すというのは、どうでしょう?」
「お使いを引き受けるというのは、どうでしょう?」
「3名とも、今回はそれで許してやるとしよう。」
厳龍はこのような若者やベテランの力がなければ、動かないものなのである。




