smartじゃなくても良いんだよ
苦しい闘いをしている事は、厳龍乗員の会話からも、うかがい知る事が出来る。宮村上等兵と、前橋伍長、鳥沢軍曹の3名は、いつもの様にレーダーを眺めながら、話をしていた。
「最近思うんです。自分達は何の為に戦っているのかと。それが分からなくなる時があるんです。」
「タイムスリップしちゃってるからな。それに俺達下士官・兵は上からのただ言われるままだしな。」
「言われた事だけやってりゃ良いんだよ。意味なんて考えるだけ時間の無駄だぜ。」
「それじゃあ、ロボットじゃないですか?自分達は戦闘マシーンじゃないんですよ。」
「確かに俺達下っ端にも、感情くらいあるからな。」
「生きる為に戦ってる。そこに意味なんかないさ。」
「本当にそれで良いのでしょうか?帰る家も時代もない。」
「今は贅沢言わず、厳龍で我慢しとけ。」
「俺達は、生き残らなきゃならんのだ。」
「生き残らなきゃ帰れませんもんね。」
「アメリカに怨みはないが、自分の生と天秤に掛けるとな。」
「それが人間の戦う単純な本能ってもんだ。」
「訓練だけしてる21世紀の自衛隊では分からんよ。」
「分からないんじゃなくて、味わえないんだよ。くそみたいな法律と憲法のせいで。」
「そういう意味では良い経験させてもらってるんだよ。」
「大本営は、どこまでも面子にこだわってますからね。」
「それだけじゃねぇ。また、ウソついて国民をかきみだしている。」
「よせ。こんなところで、飼い主批判してもしょうがねぇ。」
「なーんの楽しみもなく、しょうもない可能性に掛ける。」
「宮村上等兵、もっと上向こうぜ!確かに辛い事も多いけどさ。」
「前橋伍長の言う通りだよ。下向いててもしょうがねぇ。」
「勝てるとか勝てないとかは、後からついて来るモノですからね。」
「いきなり前向きになったな。まぁよい傾向だが。」
「冷静な脳みそは大事にしておいた方が良い。」
「一蓮托生とは、まさにこの事ですね。」
「俺達下っ端は、smartなんかじゃなくて良いんだよ。」
「smileと冷静ささえあればな。」




