覇権の行方
「近田中佐!戻ってたんですか?」
近田中佐を見つけた戸村先任曹長が声をかけた。
「まぁ、上がどうしても戻れって言うもんだから、仕方なくな。」
「どうでした?戦艦扶桑の乗り心地は?」
「あんまり良いとか悪いとか、そういう次元のものじゃないな。」
「どういう次元ですか?」
「正直、もう乗りたいとは思わん。」
「それに、大艦に揺られてるより艦爆や戦闘機の方がよほど良い。」
「実際に乗られてたんですか?」
「5機位は落としたかな。」
「凄いじゃないですか。立派な海軍航空隊のエースパイロットじゃないですか?」
「それにしても、近田中佐は厳龍にいるより、戦艦扶桑にいた方が良いんじゃないですか?」
「私が司令官だったら、近田中佐を厳龍に戻したりはさせませんよ。」
「続けて喋り過ぎだ、バカ。お前もよっぽど外に出たいんだな?」
「そりゃそうですよ。戦艦扶桑に行ってた近田中佐がどれだけ羨ましかったか。」
「戦艦や空母をどんどん落とす厳龍は、それ以上に羨ましかったかな。」
「中にいると実感わかなくて。」
「そんなもんだな。」
「戸村先任曹長に聞きたい事が幾つかあるのだが?」
「何でしょう?」
「日本は勝てると思うか?」
「それに、この先の戦いで中国・ロシアの協力を得たというが?」
「一つ目の質問は、不明です。二つ目の質問はその通りです。」
「私はこの勝負、はなから勝てるととも思っていないのだが?」
「大本営は、見栄を張りたかったのでしょう。」
「厳龍がいるから勝てるなんて、軽く考えているなら大バカ者だぞ。」
「本当にその通りですね。ただアメリカも策を打ってくるはずです。」
「たかが知れているが、それでも総合的な戦力はあちらさんの方が上だ。」
「戦争は、総合力で戦うものですからね。」
「一つ良くても、二つ駄目なら、三以上にはなれない。」
「三にもなれそうにないですね。」
「日本が負けても、何も変わらん。」
「それに今の日本には敗北が必要だ。」
「自分は勝ち続けるのもありかと考えますが。」
「戦いは想像とは、違う物になるのもしばしばだ。」
「とにかく勝った方が覇権を握るんですよ。」
2人の予想は当たるのか、ハズレるのか確率は、50%である。




