尾藤中佐殿と宇都宮伍長
日本にとって譲れない一点であった台湾。ただアメリカも、大ダメージを受けつつも、台湾を獲得したことで、油断していたのかもしれない。
いずれにしろ、日本もアメリカもこれ以上の戦争の長期化は望んでおらず、台湾は講和に持ち込む為の噛ませ犬的な戦場になっていた。
その意気込みが、二人の厳龍乗員から読み取る事が出来る。尾藤中佐と、宇都宮伍長である。
「おーい。宇都宮伍長!いないのか?」
「中佐殿も目が悪くなったんですか?ここにいますよ。」
「聞いたか?台湾攻略戦の話。」
「尾藤中佐が知らない話を伍長の自分が知るはずないでしょう。」
「まぁ、それもそうだな。で、どう思った?」
「我々は沖田艦長に就いて行くだけです。」
「俺はなぁ、今回は敵さんも本気で来ると見てる。」
「そうですかね?アメリカの強さは物量に物を言わせてるだけです。」
「そこなんだよ。日本とアメリカの違いは!まぁ誤算もあるだろうがな……。」
「誤算とは、厳龍の事ですか?」
「ああ。」
「敵さんは恐らく厳龍の存在に気付いてる。」
「それは中佐殿の予測ですか?」
「まぁな。」
「だからと言って、俺達の戦い方が変わる訳じゃない。」
「正直、自分はアメリカがここまで弱いとは思っていませんでした。」
「それは、厳龍がいたから言える台詞だな。」
「ええ。ですがこれからの戦いも気を抜けません。」
「また、呉基地に戻りたいな。」
「そうですね。」
日本がアメリカの野望を打ち砕いてこれたのは、厳龍がいたからである。その中で操縦している人間も又血の通っている人間なのである。
アメリカ海軍にドルフィンというコードネームをつけられマークされているとは、つゆしらず。
日本は台湾を奪い返す為に、テニアン島急襲から二週間後に作戦を開始する事になる。




