中堅隊員達の声
これは、作戦海域に向かう厳龍艦内で、交代で休憩を取る士官や下士官の様子である。古寺少尉に井野軍曹に森山軍曹である。
「この作戦は、日本の命運を握るかもな!」
「本当なんですね。何だか浮世離れしてて…。」
「井野軍曹も森山軍曹も実戦は初めてか?」
「リムパック演習で模擬標的を狙った事は、ありますが。」
「自分もリムパック演習でしか経験はありません。」
「そういう俺も初めてなんだよな。魚雷なんてさ…。」
「打つの初めてでしょう。皆実戦は経験していないですから。」
「今の日本では戦争はしてませんから…。」
「本当、潜水艦乗組員としては良い経験だよ。」
「しかし、この世界の兵器開発局は凄いですよ。」
「89式酸素魚雷もハープーンUSM対艦ミサイルもコピーしちゃうんだもんな。 」
「正直反則技だよな?67年後の兵器なんて。」
「それでもあくまで自衛の為です。専守防衛。」
「そうするしかないもんな。今の日本がたどって来た道…。」
「大分歴史が変わってしまったのは仕方ない。」
「自分達に罪はないよ。なぁ森山軍曹?」
「ああ、どう考えても自分達に責任はない。」
「でも何だか毎日刺激あるよな?」
「そうですね!敵艦を沈めるなんて事は。」
「最高にエキサイティングな事ですよ。」
「グアム・サイパン作戦、成功するといいな。」
「そうですね。でも自分達には厳龍がいます!」
「この兵器で負けたんなら納得ですね。」
士官や下士官とは言っても、彼らはまだ20~30代の若者である。そんな彼らがタイムスリップしてきた世界で、魚雷を撃ち合う事になるとは、思わなかっただろう。それでも彼らは元の世界に戻る為に、必死で作業に追われていた。




