内野中尉と星川少佐
一方、呉基地に戻った厳龍は、ドックに入り整備を受けていた。いよいよ、これからが米内海軍大臣の考えた大博打、第二次パールハーバーならぬ総攻撃を控えていた。厳龍乗員には申し訳ないと思いつつも、敵艦隊の壊滅という目的を達する為、3度目のマリアナ諸島のグアム・サイパンに向かう事になった。
厳龍がテニアン島で蹴散らしたアメリカ海軍太平洋艦隊の他に、まだマッカーサー元帥の乗る艦がある第5艦隊は、手付かずのまま戦力を保っており、別地域からの援軍も来ている事だろう。とにかく今は何としても、今持ちうる最大級の戦力をぶつけて、講和に持ち込みたい。つまり、米内海軍大臣は、終戦の為の最後の大博打を打とうとしていた訳である。
そして、それが囮であり、厳龍を中心とした潜水艦部隊による攻撃が敵艦隊の壊滅の本命であった。その覚悟は、二人の士官の会話から見ても分かる。星川少佐と内野中尉である。
「なぁ、また俺達出撃だってさ。人使い荒いよな?」
「そうですねぇ。でも仕事している感じがして良いじゃないですか?」
「バカ野郎。まぁ確かに今の給料は帝国海軍からもらってるもんな。」
「されと命を天秤に掛けなくちゃ行けないのが、僕らの仕事ですから。」
「内野中尉は、よく分かってるんだな。うちの部署も欲しいよ。お前見たいな奴。」
「この厳龍に乗ってる人達とは、一連托生ですから。どこの部署でも同じです。」
「今度の攻撃が最後だと良いんだけどな。」
「うーん…。どうでしょう?まだ、アメリカ海軍は欧州に回した艦隊がありますし…」
「やっつけてもやっつけても、よくもまぁこんな国と戦おうなんて。」
「それは自分もそう思います。アメリカ相手の戦争なんて無謀です。」
「何はともあれ、ここで生き残らなければ、帰れん。」
「そうですね。じゃあちょっくら一仕事やって来ますか?」
64名は、それぞれの想いを抱え、厳龍に乗り込んで行った。これが最後の上陸とならない事を祈りながら。




