ダグラスマッカーサー元帥現る
沖田は、テニアン島に停泊しているアメリカ海軍太平洋艦隊は、二ミッツ大将の率いる部隊だと出港前の呉で上田少将に言われていた。
沖田は、寝込みを襲う事を推しつつも、最初は酷く抵抗があった。だが、水野中佐が言った一言により思い直す。
「どうせ、騙し討ちから始めた戦だ。だったら一度や二度寝込みを襲うくらい何でもないだろ?日本の一般国民を平気で殺す奴等なんだ。少し位卑怯と言われても、何て事はない。なぁ、島村二等兵‼」
「中佐の言う通りです。」
島村二等兵はそう応えるのが、やっとだった。それを聞いていた沖田は、確かに水野中佐の言う事も一理あると考え直した事で、(寝込み派)に舞い戻った。
テニアン島まで特に危ない戦場はなかった。それはそうであろう。何故ならば、マリアナ諸島周辺のマリアナ海溝は、世界で最も深く10000メートルはくだらない深さの海であった。滅多な事では潜水艦は潜航しない所である。
その為、敵の哨戒網はゆるく、警戒の薄い所であった。だが、敵機動部隊がテニアン島でのんびりしているという事は、まだそこまで厳龍はアメリカ海軍を追い詰めていないという証でもある。
ならば日本海軍が牙を剥きやすくするために、軽く太平洋艦隊の一つや二つ、楽に壊滅させてやる。そんな意気込みであった。
ただ一つ間違っている情報があった。テニアン島には、太平洋艦隊だけではなく、アメリカ海軍第5艦隊も停泊していた。そう、誰もが知るアメリカの軍人マッカーサー元帥が乗る艦があった。
厳龍乗員や、彼らの元いた世界の日本人にとっては、敗北の象徴のような男であり、彼を叩く事は、少しずつ変わって来た歴史を大転換させるような、大事件であった。




