寝込み派とウェイクアップ派
沖田は航海長の井浦少佐と、水雷長の倉沢少佐を交えた(厳龍内部では3トップ。首脳クラス)3名による、テニアン島急襲作戦の作戦会議を行っていた。
会議の内容は、もっぱらいつ動き出すかも分からない、停泊中のアメリカ海軍機動部隊を、いつ攻撃するかということにスポットライトが当てられていた。
このままの厳龍の巡航速度だと、作戦海域であるテニアン島には、明朝4時頃になる。もちろん、現在のスピードはかなり限界に近いものの、まだ余力を残しており、もう少しスピードのギアを上げれば、深夜に作戦海域に着く事も不可能ではなかった。
その寝込みを襲う「寝込み派」と、周辺海域で様子を見ながら、相手が起きている所を叩く方が敵に与えるダメージはデカイという、「ウェイクアップ派」に意見が分かれていた。
艦長の沖田と航海長の井浦少佐は、「寝込み派」で、水雷長の倉沢少佐だけが「ウェイクアップ派」であった。双方の主張は以下の通りである。
「このまま、少しスピードを上げて真夜中にテニアン島を急襲すれば、油断している敵機動部隊に相当なダメージを与えられる。」
「私もこのままのスピードよりもう少し、速くても問題はないと思います。敵の寝込みを襲うのは、サムライとしては避けたい所ですが、今は戦争中ですし…。」
二人の「寝込み派」の見解は、さっさと全弾を敵空母にぶちこみ大ダメージを与えて、呉に帰投したい。というものであった。
だが、それに対して倉沢少佐は、水雷長らしい全く別の角度から「ウェイクアップ派」の見解を示した。それは、確かにとうなずけるものだった。
「きちんと雷撃を成功させたいならば、私は日が昇ってからの方が良いと思います。暗いか明るいかは、精密兵器であろうとなかろうと、多かれ少かれ影響はあります。要するに、攻撃の精度は視界良好な日中の方が、高いということです。急ぐものでないなら水雷長としては、ウェイクアップ派を支持します。ですが、決めるのは沖田大佐貴方です。」




