軍曹と上等兵のあげた武功
それだけは自分達がいる以上なんとしても避けねばならぬ事であった。
それから3日間一度の戦闘を重ねる事もなく、テニアン島近海を目を見開いて哨戒し続けていた。この時、設楽少尉の元で潜望鏡を任されていた隊員が二人いる。
皆川軍曹と倉川上等兵である。二人の会話からたるんでいる様子が伺える。ちょうど設楽少尉が、仮眠をとっている時間帯であった。
「おい、倉川上等兵起きてるか?」
「どうしました?」
「もう2日、3日か、敵艦隊が現れないなんて、おかしいと思わんか?」
「暗号の解読ミスはよくあることですしね。」倉川上等兵は、皆川軍曹を見て知っているようなそぶりを見せた。
「倉川上等兵は、この時期の歴史に明るそうだな?」
「まぁ、嫌いではないですね。」倉川上等兵は確かに歴史が得意だった。
「一つだけ教えてもらいたい事があるんだが?」
「何でしょうか?」
「このまま俺達が力を出していて日本は、アメリカに勝てるのか?」それは皆川軍曹だけでなく、厳龍搭乗員全員が知りたい事であった。
「正直、厳龍の存在は異質過ぎます。ですから勝てるとも負けるとも、どちらかと断言は出来ません。ですが、現実として沖縄戦はありませんでした。我々の知っている歴史は変わるのは間違いありません。」
「何だかよくわかんねぇけど、俺達は歴史を変えられる存在なんだな?そうなのか。」
皆川軍曹は何だか嬉しそうだった。
「皆川軍曹!2時の方向に敵艦船が見えます。」
「やっとお出ましか!倉川上等兵、お手柄かもしれないぞ。」
「倉沢少佐、応答願います。」
「どうした?」
皆川軍曹は、倉川上等兵の得た情報を的確に水雷長である倉沢少佐に伝えた。設楽少尉もそれを聞いて慌てて戻って来た。敵艦船発見、それは皆川軍曹と倉川上等兵の挙げた武功であった。
「総員起こし」からの総員戦闘配置。厳龍は戦闘体勢に入った。




