サンチェス大佐の誤算
米国海兵隊の主力部隊到着の前に、海上自衛隊佐世保基地の逆襲を試みた、米国海軍特務士官のサンチェス大佐率いる100名のSEALs隊員達は、陸上自衛隊相浦駐屯地の普通科連隊と交戦。これは想定内で、実力差はSEALsの火力を持ってすれば、中隊クラスの普通科連隊しか駆けつけられなかった陸上自衛隊と海上自衛隊佐世保基地の制圧は、楽勝だとサンチェス大佐は計算していた。
「中隊長!このままでは、ここを突破され佐世保基地への侵入を許してしまいます。我々の装備では、SEALsを止められません。」
「分かっている。GMATの山田三佐の話では今大急ぎで、広島県の江田島から海上自衛隊特別警備隊(SBU)がこちらに向かっているとの事だ。」
「海上自衛隊最強の部隊が、そんな短時間で佐世保まで来られるんですか?」
「詳しい事は分からんが、佐賀の陸自オスプレイを利用するらしい。とにかく、我々は一分一秒でも長く米国海兵隊の特殊部隊SEALsの足止めをするのが任務だ!」
「しかし…89式小銃と手榴弾だけでは、限界があるのでは?」
「小隊を出来る限り佐世保基地周辺に集中させろ!ある程度の犠牲は覚悟して良い。陸曹長急げ!」
「了解!」
陸上自衛隊相浦駐屯地中隊長の松永廉二等陸佐は、部下の死を覚悟し、唯一の希望であるSBUの到着まで、耐え忍ぶ事を命じた。その頃陸上自衛隊佐賀駐屯地では、ホワイトアローズがSBU隊員を乗せ、佐賀駐屯地に到着。オスプレイに次々と乗り移り、佐世保に向かった。斎藤司一等海佐(SBU隊長)はSEALs相手に真っ向勝負を挑み、ねじ伏せようとしていた。
「サンチェス大佐?陸上自衛隊の連中、中々しぶといですね?」
「ああ…。まるで、何かを待っているかの様な戦い方だな?それに、沖縄に来たハルゼー提督の指示では陸上自衛隊の戦力は、大したことは無いと申されていたが、そうではないな。洗練されている。」
それもそのはず、陸上自衛隊相浦駐屯地の中隊長松永廉二等陸佐率いる中隊は、普通科連隊とは言え、ただの普通科連隊ではなかった。米国海軍佐世保基地で、米国陸軍特殊部隊デルタフォースと共同訓練を繰り返していた筋金入りの精鋭部隊だった。それがまずサンチェス大佐の一つ目の誤算だった。サンチェス大佐の最大の誤算は、そうではなく佐賀から来る海上自衛隊特別警備隊との交戦だった。
「あれは!?オスプレイ!あれを待っていたのか?」
「松永中隊長!?間に合いましたね!」
「あぁ、どうやら被害最小限度で間に合ったみたいだな?よし!陸曹長、我々は海上自衛隊佐世保基地内の警備に当たる!部隊を集結させ、海上自衛隊佐世保基地内に入る。」
「いたぞ!ざっと100人ぐらいですかね?斎藤隊長?」
「副隊長?こちらも、至急駆けつけた次第であるから、数的優位はない。だが、我々は海上自衛隊特別警備隊だ。勝てない理由は無い。訓練の成果を存分に発揮してくれ!それにしても、たったあれだけの戦力で陸自の奴等、2時間もよく耐えたな?」
「斎藤一佐?感心している暇はありませんよ?相手はあのSEALsなんですから。」
「援軍はこれ以上来る予定は無いそうだ。我々がSEALsを制圧出来ねば、GMATは困るだけじゃなく、対米戦争の趨勢に関わる。スナイパーの援護をしながら、一人一人の米国海兵隊員を確実に殺れ!いいな?」
「はいっ!」
「これは訓練ではない。実戦だ!殺らなきゃ殺られるぞ!」
斎藤SBU隊長はこう部下を鼓舞し、直接佐世保に赴いた。
「斎藤隊長大丈夫ですかね?」
「彼の率いている部隊は、並の部隊じゃない。海上自衛隊特別警備隊は、世界最強クラスの特殊部隊だ。SEALs相手にどこまでやれるかお手並み拝見だな?」
「山田三佐?そんなに強いんですか?」
「まぁ、黙って見てろ。直ぐに終わる筈だ。」
サンチェス大佐率いるSEALsの先遣隊は、この状況を在沖縄海兵隊司令部と、米国海軍在日司令部に連絡し、援軍要請を出したが、何とかしろの一点張りで、まともに取り合ってもらえなかった。
「仕方ない。少佐?あれを使う。」
「良いんですか大佐?司令部の許可無しには使えない代物ですよ?」
「死ぬよりも、軍法会議にかけられたほうがマシだ。」
「まぁ、大佐がそこまでおっしゃるなら…。」
と、米国海兵隊の威信をかけた反撃が開始されようとしていた。




