招かれざる客
「山田三佐?海上自衛隊佐世保地方隊所属の護衛艦いなずま艦長後藤博二佐から、GMATに緊急の入電がありました!」
「用件は何だ?」
「沖縄の米国海兵隊旅団を乗せた強襲揚陸艦イオー・ジマが佐世保基地に接岸し、部隊を展開。激しい戦闘が発生しているとの事です。」
「井上一尉?直ぐに陸上自衛隊相浦駐屯地に応援要請だ!それと、SBU(海上自衛隊特別警備隊)の出撃を海幕長に依頼してくれ!」
「山田三佐?今からSBUの出撃を命じても、間に合わないのでは?」
「確かに、地理的には間に合わないかもしれないが、米軍が援軍を送って来る前に形をつけたい。それまでは、佐世保地方隊と相浦駐屯地の陸自部隊で、何とか持ちこたえてもらいたい。」
「GMAT隊長山田三佐?聞こえているか?」
「はい、聞こえています後藤二佐。詳しい状況を教えてください!」
「米国海軍佐世保基地に米軍の艦艇が続々と入港してきている。一旦、沖縄に引き上げていた在日米国海軍の艦隊が、そのまま戻って来ている。」
「迎撃は難しいですか?」
「佐世保地方隊所属の全艦艇と人員が、海自佐世保基地で待機しているが、このままでは沖縄から来る米国海兵隊と、佐世保沖で艦隊決戦になるぞ?手を打つなら至急武器兵器使用許可を出してくれ!」
「一度は見限った佐世保基地に逆襲?ハロルド中将は何を考えている?」
「山田三佐?これは、米国海軍第7艦隊司令官ハロルド中将の指示ではない。ハルゼー提督の指示だ。」
「どうやら、米国は佐世保基地を足がかりに、日本本土を攻略したいようだな?そうはさせまい。山田三佐?海上自衛隊呉地方隊の南雲裕二地方総監(海将)に連絡し、第一潜水艦隊とSBUの出撃を至急要請してくれ!」
「海幕長!P−3C哨戒機と空自のF-15戦闘機を同時にスクランブル発進させましょう。」
「そうだな。空幕長には私から説明しておく。」
「お願いします。山本閣下?佐世保地方隊の全艦艇の武器兵器使用の許可をいただけますか?」
「聞くまでもないだろう。全艦艇戦闘配置につき、米国海軍艦艇の佐世保基地入りを阻止するんだ!」
「聞こえましたか後藤二佐?」
「あぁ、佐世保地方総監の渡辺海将にも伝えた。これより、米軍と交戦する!」
ズドーン!!
「来たか?渡井水雷長!イオー・ジマに対艦ミサイルの発射準備だ!」
「駄目です艦長!イオー・ジマにはもう海兵隊員はいません!」
「何!?米軍の海兵隊はどこを目指しているのだ?」
「海上自衛隊佐世保基地に向かっている様です。」
「くそ!相浦駐屯地の陸自部隊はまだか?佐世保基地が制圧されたら、海上自衛隊佐世保地方隊の指揮系統は滅茶苦茶になる。そうなれば、まずいな…。山田三佐?どうする?」
市ヶ谷の防衛省に緊張が走った。だが、この男だけは冷静だった。
「山田三佐?どうしましたか?」
「井上一尉?佐賀の陸自駐屯地にオスプレイが配備されていたな?」
「陸自の事はよく分かりませんが、ニュースになったので、それは知っています。」
「山田三佐?SBU隊長の斎藤司一等海佐だ。今、ホワイトアローズの航空機で、佐賀に向かっている。佐賀の陸自オスプレイで佐世保に向かえば、最短で佐世保基地を守れる。それでも良いか?」
「ホワイトアローズ?海上自衛隊の曲芸飛行部隊を移動手段に使うなんて、信じがたいが、流石はSBUだ。機転が利いている。斎藤一佐?そのプランで行きましょう!」
「陸自の普通科連隊じゃ、SEALsは倒せないだろうからな。」
「やはり、海上自衛隊佐世保基地を狙っているのはSEALsですか?」
「沖縄からの招かれざる客だ。わざわざ乗り込んでくるなら、手加減なしで来るはずだ。」
斎藤一佐の予想は当たっていた。沖縄からの刺客は米国海兵隊の特殊部隊SEALsであった。それもただのSEALsではなく、米国海軍特務士官のサンチェス大佐率いる精鋭部隊を米国は佐世保に送り込んで来ていた。
「山田三佐?海上自衛隊佐世保基地周辺に、陸上自衛隊相浦駐屯地の普通科連隊が展開しました。」
「そうか…。SBUが来るまで、何とか持ちこたえてくれ!」
壮絶な佐世保基地逆襲戦が展開されようとしていた。




