機関科の軍曹と兵糧科の少佐
艦の整備には、時間をかけたいと沖田自らが申し出ていたため、タッチアンドゴーという訳には行かなかったものの、2日もあればリフレッシュした隊員を乗せて、沖縄の防衛に当たる事が出来ていた為、作戦行動中でも、ストレスが大きく溜まるというような事はなかった。
これはある士官と下士官の会話である。戦闘中乗り組み員がどんな気持ちになるのかよく分かる為、記載する事にした。機関科の大橋軍曹と兵糧科の田倉少佐の二人で、大橋軍曹が田倉少佐に夕食をもらいに行った時のヒトコマである。
「機関科の大橋であります。」
「任務ご苦労。」
「今日の飯も旨そうですね。」
「真っ黒な顔して。」
「田倉少佐の飯はいつも美味です!」
「なぁ、戦闘してる感じする?」
「自分は機関科ですので、戦闘の事は分かりませんが、通常潜航では考えられない様な急加速をする事はありますね。」
「俺は握り飯を握ってるだけだからさ、戦っている感じがしなくてな。」
「艦を動かしているのは、人です。人の燃料は飯です。たから、田倉少佐のいる兵糧科がなくては、この艦は動かせない事になります。」
「上手い事を言うじゃないか、よし、今度からここに来る色々な奴に戦闘中の感想を聞いて見よう。」
「それは面白いかもしれませんね。」
戦闘に関わる事のない、二人のシュールな会話が戦争をリアリティーのあるものにする。アメリカと戦争をしているなんて、まさしくタイムスリップしなければ、有り得ない状況ではあるが、それを一番ダイレクトに感じていたのは、潜望鏡員の設楽少尉ではないだろうか?目視で戦果を確認する。それは潜望鏡員にしか出来ない。そ のショックというか衝撃度は、相当に高かったと言えるのではないだろうか。
アメリカ海軍の艦船に魚雷をぶちこむという現実は、戦争になれていない自衛隊員にとっては、相当なカルチャーショックだったと言える。




