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深海の精鋭たち(サブマリナーズ)  作者: 佐久間五十六
昭和の大日本帝国海軍の潜水艦

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英国海軍空母クイーンエリザベス級の派遣

米国と蜜月関係にある英国のスナイダー首相は、英国海軍の誇る通常型動力空母クイーンエリザベス級の海外派遣を、閣議決定した。英国政府としては、米国海軍原子力空母ニミッツの撃沈を受けて、最新鋭かつ英国海軍唯一の空母であるクイーンエリザベス級を海外派遣する事に関しては、容認しつつも英国内の世論を踏まえて、あくまで米国海軍空母打撃群の護衛と後方支援と言う形での作戦参加に留めると言う、条件付きでの空母派遣に留めた。英国と国境を接する欧州唯一の原子力空母シャルル・ド・ゴールを保有するフランスの動向が定まらない今、英国海軍内部ではクイーンエリザベス級空母の海外派遣には、根強い反対論がくすぶっていた。その頃、市ヶ谷の防衛省では、ニミッツ改め原子力空母赤城の自衛艦隊編入に対して、艦載機をどうするかの議論が熱を帯びていた。

「航空自衛隊のF-15戦闘機やF-2支援戦闘機等は、設計上は空母艦載機ではないが?」

「山田三佐?赤城の艦長には誰を推すつもりですか?」

「GMATとしては、原子力空母の艦長にはやはり航空自衛隊の幹部自衛官に任せたいと考えています。空母艦載機に関しては、蒸気カタパルトの特性を踏まえた上で、総合的に考えても航空自衛隊が一番運用に信頼を置いているF-15戦闘機の改良型を配置するのが、望ましいと考えています。」

「F-15戦闘機の改良型か?空幕長?直ぐに実戦配備は可能か?」

「実戦配備の技術自体は可能でしょうが、問題はパイロットの技術の方にあるかと?」

「確かに空母への着艦が戦闘機の操縦テクニックの中では、一番難しいとされているし、航空自衛隊のF-15戦闘機のパイロットの多くと言うか、ほぼ全員が未経験の事だからな。問題はそこか?」

「空幕長?一つ山本五十六自衛艦隊司令官から提言があるそうです。」

「何ですか?山本海将?」

「空母への着艦は、訓練を重ねればどうと言う事は無い。先の大戦で旧日本海軍の空母機動部隊の指揮経験がある私なら、2週間で空母への着艦訓練をマスターさせるスキームがある。」

「山本海将?零戦とF-15戦闘機では全く別次元のスピードですよ?大丈夫なのですか?」

「スピードは問題では無い。これは、テクニックと言うよりも、もっとロジカルな問題だろうな。」

「とにかく、時間が無いのは確かです。ここは、山本海将の空母機動部隊運用スキームにかけましょう!」

「心配は尽きないですが、分かりました。赤城艦長の人選に関しては空幕長の私が、責任を持って対処致します。」

と、山本五十六閣下の熱弁で、空母艦載機問題は解決したが、GMAT隊長の山田三佐は、米国海軍だけではなく、米国の同盟国である英国海軍の空母クイーンエリザベス級にも深刻な懸念を感じていた。何故なら、事実上空母打撃群の数は一つ増えた事になるからである。それに加えて英国は核保有国であり、原子力潜水艦や歴史ある優秀な陸海空各軍隊を保有しており、ロシアと日本の戦力と、米英にイスラエルを加えた戦力では、まだ日露両国だけでは圧倒的に劣勢であると言う状況に変わりはなかった。

「では、佐藤艦長?何度も申し訳ありませんが、渡仏し田中総理の親書をフランス大統領カリベルト閣下に渡して下さい。」

「命令には従うが、フランス大統領への外交なら地理的にロシアに任せるべきでは?」

「佐藤艦長?防衛省特務士官の戦力分析ではフランス海軍の囲い込みは、対米包囲網を確実な物にする為の必須条件なんです。それに防衛大学校で散々学んだはずですよね?ロシアとフランスは、歴史的に仲が良くないと。」

「フランス大統領カリベルト閣下は、取り合ってくれるのか?」

「それはやってみなければ分かりません。ロシア大統領サージ閣下を口説き落とした佐藤艦長なら、大丈夫ですよ。それに今回の任務はGMATではなく、田中総理直々に選任された現役の駐仏大使の権藤栄作氏を同行させますのでご安心を。」

「まぁ、こんな状況下だ。潜水艦せいげいにとっては大したことでは無いが、田中総理自ら外遊に出かけられる様な状況でもないからな。折角、ロシアと同盟国になったんだから、北極海航路で行かして貰うぞ?」

「わざわざ、危険な中東や喜望峰経由で行くつもりだったんですか?」

「そうではないが、ロシアでの補給の事を考えれば、自然とそうなるだろう?」

「ただ、ロシアの先はまだどんな危険が潜んでいるか分かりませんよ?」

「そんな事は百も承知でせいげいを行かせるのではないか?」

「まぁ、実際はそうなんですけどね。GMAT隊長の私としては、限られた海自潜水艦の遠洋航海は避けたいのが本音ではあります。」

「なら、ロシア海軍の原子力潜水艦を活用すれば良いではないか?」

「それは、それでもっとリスクがありますし、調整する現場の自衛官の身にもなって下さい。ロシア海軍太平洋艦隊を横須賀に移転させるのに、どれだけの労力を割いた事か。」

「で?いつ出発すれば良い?」

「今から行って下さい。」

佐藤艦長はさして驚きもせず、横須賀港を後にした。

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