不可能を可能にする山田三佐の秘策
「山田三佐?仮にも相手は、あの米国海軍の空母打撃群ですよ?本当に攻略法があるのですか?」
「まぁ、これまでは誰もそんな大逸れた事をしようなんて輩は世界に存在しなかったからな。空母打撃群の攻略は不可能だと言われていたが、GMATの分析と言う秘策があれば、鉄壁の空母打撃群でも攻略は可能だと考えている。」
「GMATの分析ですか?具体的にはどういったものですか?」
「難しい事じゃない。これを使うんだ!」
「え?ドローン工作ですか?」
「このドローンを100機ニミッツ艦上にばらまき撹乱させ、その隙をUUVとくろしおの魚雷飽和攻撃で仕留める。と言う寸法だ。」
「そんな手に米国海軍空母打撃群がまともに引っかかるとは、到底思えないのですが?」
「GMATの分析によれば、下北半島沖に展開している米国海軍空母打撃群の艦艇数では、ニミッツを守り切るだけの兵器を有していない。それは、米国も認識しているはず。とにかく三沢基地に配備しているF-22やF-35Cを速やかにニミッツに着艦させたいと、躍起になっている。その証拠に、ニミッツの艦上には一機の航空機も無い。」
「でも、それらの最新鋭戦闘機群は空母に着艦出来る仕様にはなっていないのでは?」
「米国空軍の優秀なパイロットの事だ。あのドデカイ原子力空母に強引に着艦させる技術位どうと言う事は無いだろう。」
「確かに、それは一理ありますね。」
「山田三佐?準備は出来ているぞ?」
「じゃあ、トットとやっつけちゃいましょう!竜矢先輩!」
「竜矢先輩?お知り合いですか?」
「くろしお艦長は防衛大学校の2期先輩で、防衛大学校学生時代同じ小隊だったんだ。色々とお世話になった旧知の仲だ。だから、今回の作戦に参加してもらった。」
「良いんですか?作戦に私情を挟んで?」
「私は総理からの指示で動く直轄部隊GMATの隊長だぞ?そこら辺にいる三等海佐とは、訳が違うのだ。」
「いや、三等海佐は三等海佐ですよね?」
「佐藤艦長はどう思います?」
「もう少し階級が上の人間が言うのなら、その理屈も通るのだがな。三等海佐は…三等海佐でしかないな。例え、防衛省特務士官とは言えな。」
「山田三佐?三沢基地周辺を哨戒しているP−3C哨戒機からの通信によると、まだ戦闘機群のニミッツへの着艦は確認されていません。」
「チャンスはそう多くはない。竜矢先輩!お願いしますよ!」
無人潜水艦艇UUV5隻に護衛された潜水艦くろしおは、いつでもニミッツを撃沈出来る位置について、山田三佐の攻撃命令に備えた。その頃、モスクワではロシア大統領サージ閣下の身に危険が及んでいた。
「ダダダ、ダダダ!」
「何事だ?直ぐに応戦しろ!」
それは、世界最強とうたわれる諜報機関であるイスラエルのモサドによるサージ大統領暗殺作戦だった。だが、それに対してサージ大統領は、ロシア陸軍の特殊部隊スペツナズの一つである第14独立特殊任務旅団の出撃を命じ応戦し、激しい銃撃戦の末にイスラエルから派遣されたモサド隊員20名全員を射殺。ロシア陸軍側も数名の死者を出したが、サージ大統領の命に別状は無かった。
「何?モサドがサージ大統領の命を狙っただと?」
「ロシア陸軍の特殊部隊スペツナズが出撃し事なきを得たとの事ですが…。」
「米国マクドナルド大統領の指示下にイスラエルはあるからな。それにしても、モスクワに直接モサドが出て来たとなると、サージ大統領や田中総理と言った要人の警護には、万全を期す必要があるな?」
「その通りです山田三佐。しかし、そう過度に心配する必要はないかと…。ロシアには複数の特殊部隊があり、スペツナズがいる限り余程の事が無ければ、まずもって殲滅される可能性は低いでしょう。ただ、海洋国家で島国の日本とは違い、ロシアは大陸国家でNATO諸国や中央アジアと言った広大な地域と陸続きの国です。同盟国の相互防衛は、これからの戦争の行方を占う上で欠かせない要素ではあります。」
「NATO諸国ねぇ?フランスやドイツと言った実力のある国々はまだ、この戦争への参加表明はしていない。なぜだか分かりますか?山本閣下?」
「山田三佐?私は現代戦には疎い。特に空母の知識も80年以上昔の物で、ちっとも役に立たない。そんな私でもそれくらいの事は分かる。欧州を戦場にすれば、たちまち第三次世界大戦になる。それだけは避けたいのだろう。」
「とは言え、日本が始めたと言う点では、第二次世界大戦と流れは同じです。現状、英国とイスラエルだけが米国側に付いていますが、今後の情勢いかんによっては、米国側に付くNATO諸国の数によって、対欧州戦略は変わって来ます。」
「核保有国のフランスがキーになりますね?」
「はい。それにNATOは対ロシア戦争を想定した米国主導の広域軍事同盟です。普通に考えれば、米国優勢となるはずですが、欧州各国も一枚岩では無い様です。」
「第一次世界大戦も第二次世界大戦も、欧州は散々な目にあっているからな。ここは、田中総理やサージ大統領の外交力が試されるな?」
そんな事より、山田三佐は米国海軍の原子力空母ニミッツの撃破に注力したかった。
「山本閣下?お願いがあります。」
「何だね?急に?」
「潜水艦せいげいで渡仏し、フランスとの軍事同盟締結に御尽力して頂けませんか?」
「佐藤艦長?私は構わないが…。」
「山田三佐?今回は通訳を用意してくれよ?」
「はい!よろしくお願いします!」
フランスを味方に出来れば、対米英戦争で優勢を保てる公算が大きくなる上に、その政治的意味合いは対欧州各国に多大なる影響力を与え得るものでもあった。




