左腕
井野元中佐の次は法野元中尉に声をかける事にした。
「これからどうするんだ?厳龍第一世代のエースは。」
「どうっていう事はないですよ。どうせ余生も少ないでしょうし。」
「どういう事だ?何で余生が短いって分かる?」
「2012年から来たcrewは自分の生年月日で死ぬ。」
「厳龍乗員第一世代なら、誰もが知ってる都市伝説ですよ。」
「それを知ってるなら、話は早いな。お前もその不可思議な現象の理由を知りたくないか?」
「原因なんてあるんですか?調べるなら手伝いますけど。」
「それでこそ厳龍第一世代のエースだよ。どこまでやれるかは、分からんがな。」
「あてはあるんですか?」
「まぁ、無きゃこんな誘い方はしないさ。」
「お前さんにゃ、ちょっと会ってもらいたい人物がいるんだよ。」
「今更何を驚く事もありません。何でも良いですよ。」
「明日がその日で死ぬ事は恐怖じゃないか?」
「仕方ないと思います。それもまた運命でしょうし。」
「数奇な運命は許せないが、人生としては充実していたかもな。」
「そうですか?男として自分は何も残せてませんけどね。」
「それもまた人生だ。正解なんて物はない。」
「嫁さんをもらって子供が生まれて、そういうありきたりな幸せにあこがれる事もあります。」
「それは来世にとっておけって事さ。」
「原因なんて分かるんですか?」
「そんなもの分からないかもな。」
「勝ち目の無い戦だからこそ男という生き物は燃える。」
「やれるだけやれって事ですね?」
「その通りだ。別に制裁があるわけでも無い。」
「井野元中佐にもお願い致した所だから、何とか成るだろう。」
「井野元中佐は、戸村元艦長の右腕じゃないですか?」
「気心の知れたメンバーで、俺達がここにいる理由を明かした時、厳龍マニュアルは完成するんだ。あ、これ内緒だよ。」
「戦は勝ち目が無い時の方が面白いですよ。」
「正確には、そういう所から滲み出すのが面白みってものなんだよ。」
「難しい事言いますね。相変わらず。ま、良いですよ。」
「何が良いって?」
「どうせやること無いんでやりますよ。」
「そうでも言わないと、いつまでも食い下がるのが、戸村元大佐という人間ですからね。」
「良く理解してるじゃないか。それでこそ俺の左腕じゃないか!」
「って、いつから自分は戸村元大佐の左腕になったんですか?」
「今から。(笑)」




