三代目艦長 村雨零三郎
戸村大佐は、とある人物を艦長室に呼び出していた。その人物とは、村雨零三郎先任海曹長である。まだ、35才の若手のホープだ。
「今日ここに君を呼んだのは他でもなく重要な事があって、呼んだのだがまぁ、座りたまえ。」
「艦長からお呼びがかかったのは初めてですね。それなりの重要案件かと。」
「まわりくどいのは嫌いだ。次期艦長になってはくれぬか?後を託せるのは君以外に見当たらん。」
「はい。分かりました。」
「冷静だな?」
「人員入れ換えの話は聞いていました。」
「断るなら、今のうちだぞ!原子力潜水艦が海軍の主力となってきた今、厳龍はいつ退役となるかも分からないんだ。御前が厳龍最後の艦長になるかもしれない。」
「艦長が時間をかけて考えた決定です。従う他ありません。」
「何か不安はないか?聞くのも今のうちだぞ。」
「では、一つ。この潜水艦には秘密がありますね?」
「何故そんな遠回しの表現を使って聞く?」
「厳龍は未来から来たというのは、本当でしょうか?」
「都市伝説だと言っても、誤魔化せないな。そうだ。俺も厳龍も2012年の未来からやって来た。」
「それ以上は聞きませんよ。艦長になる上で確認しておきたかったのは、それだけですから。」
「そうか。御前は第二世代の人間だもんな。」
「第二世代の間では、かなり話題になって増した。でも、当直でお世話になった第一世代の先輩達は、その事を教えてはくれませんでした。」
「これは、厳龍マニュアルだ。前任の沖田元少将が作った資料だ。困ったら、これを読め。部外秘だぞ。」
「門外不出のマニュアル書、確かに受け取りました。」
「御前の様に、信頼できる部下を作る事を、俺は怠っていたようだ。」
「私を選んでいただきありがとうございます。」
「あっという間だったよ。今日まで色々あったな。」
「厳龍が現役である限り、しっかり守ります。」
「その頃には、俺はもうこの世にはいない気がするな。」
「ところで、第三世代の召集はもうかけてあるのですか?」
「いやしてない。大本営からは新艦長に委任しろって事だから。」
「まさか、自分が全部やるんですか?え~っ。」
「おい、これしきの事でびびってたら艦長なんて出来ないぞ。」
「忙しくなりそうですね?」
「他人事じゃねぇか。」
「まぁ、後は御前に任せた。好きなようにやれ。」
「失礼します。やることが山積みなので。」
戸村大佐は、村雨零三郎先任海曹長を、次期艦長にする方向で、調整に入った。




