表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深海の精鋭たち(サブマリナーズ)  作者: 佐久間五十六


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

188/244

見えない背中

 1975年4月時点で、厳龍乗員が入れ替わって10年が経った。戸村艦長を含め、定年が近づいている乗組員は、20人近くに昇った。

 またしても、乗員を入れ換える必要性のある時期になった。もちろん、艦長の戸村大佐とて、ただ、時を経て来たわけでなく、後継者を誰にするかを考えていただろう。それに加えて、厳龍があとどのくらい現役でいられるか、という見通しは経っていただろう。

 幸いにして、日本周辺で戦争は行っていなかったし、あったのは大地震くらいのもので、先々の事を考えるには、充分な時間があった。

 厳龍が日本海軍に飛び込んで30年。当時の艦長沖田少将はもうこの世にはいない。あの頃の士官はほぼ全員退役して、下士官や兵隊だった人間が、士官になって久しい。新たな下士官や兵隊もすっかり板についた。

 そうやって守ってきた厳龍は、彼等のホームであり、日本を守ってきたというよりは、厳龍を守ってきたといっても過言ではない。血の繋がりはないため、そう考えるのも無理はなかった。

 厳龍自身に自覚はないが、歴戦を乗り越えてきた艦船・船体はボロボロになっていた。整備の為、ドックに入る回数も目立って増えてきていたし、毎日の小さな無理の積み重ねが、厳龍を蝕んで行った。

 戸村大佐の手元には、それらマイナス要因を統合的に判断する資料があった為、厳龍の艦船としての寿命がどのくらいなのかは、容易に予測出来たし、その資料には穴があくほど目を通している。

 厳龍の船体データは、船のメンテナンス時におおよそ分かる。戸村大佐は、自分の退官年齢が近づいている中で、後継の日本初の新型原子力潜水艦にシステムを移行する準備を、進めていた。

 誰に後を託しても困らないように、亡き沖田譲りの厳龍マニュアルを本格的なサブマリナーズの指針として完成させた。戸村大佐は亡き沖田の見えない背中を追っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ