厳龍幹部による井戸端会議
戸村大佐は、村井中佐と宮村大尉と、呉基地の食堂で、井戸端会議を開いていた。
「俺達は海中だったから分からんかったが、凄かったらしいな?津波。」
「地震も凄かったらしいし、津波も見たことない高さまで、来ていましたよ。」
「なんでも、日本軍の初動対応が遅れて大バッシングだったという話ですよ。」
「俺に言わせりゃあ、ちょっと遅れた位でガタガタぬかすなつーの。警察も消防隊も、俺らと同じ位でしか動けてなかったのを、棚にあげて。」
「その発言は国民には絶対公表出来ませんね。」
「実際問題、あんだけデカイ自然災害にあって、仕方ないって言えば、それまでなんですけどね。」
「モノの例えだよ。本気で俺が、そんな冷酷な艦長に見えるか?」
「確かに言われてみれば、日本軍が上手く機能してても変わったのは…。」
「死者行方不明者の数でしょうね。」
「その救えたはずの命を国民は問題視しているんですよ。」
「税金払って食わせてやってるんだから、大事な時位動けよ、この野郎…ってか。」
「ずいぶん高飛車ですね。いつから日本国民は、そんなに偉くなったのでしょうか?」
「日本軍はやれるだけの事は、やったと思うよ。あの大混乱の中。」
「まぁ、プラス思考で考えたら、そうなりますね。」
「国民が言いたいのは、もっと早く動いてよ。って事なんですよね。」
「でもタラレバはNGだぜ。俺達の世界は禁じ手だよ。」
「日本軍の機能不全はどう考えても、不手際でしょう?」
「いや、その逆方向ですよ。アノときはあれが、精一杯だった。」
「多国籍軍に感謝はするが、日本人を多く助けたのは、日本軍ですよ。」
「数だけみるとそうなりますね。まぁ、当然ですね。」
「実際問題、この国難に乗じて我が国に攻めて来ようとする、国はなかったって言えますか?」
「まぁ、敵にとってはまたとない絶好のチャンスですね。」
「日本軍は災害レスキュー隊じゃないんですよね。」
「その話は、元いた世界でも議論になったよな?」
「俺達の主任務は国防。ってはっきり言えば良いんですよ。」
「たまたまそう言う力があるから出張るだけで。」
「そもそも論としては、全うな事を言ってますけどね。」
「日本軍の初動対応の遅れを云々言ってる奴は助けないぞ!」
「責めるべきは軍に有らず。災害を憎め。そして、それが運命なり。」
「まぁ、ここだけの話ですけどね。全部。」




