矛を失った武将
本日の当直は、村雨曹長、脇田伍長、凪野上等兵、西東二等兵の4人だった。
「当直ってだるいな。」
「ここだけの話、ぶっちゃけダルいっす。」
「上の人に聞かれちゃ、まずくないですか?」
「まぁ、幸い今日の責任者は村雨曹長ですし。」
「バカ野郎。俺だから許す訳じゃないぞ。本音を言っただけだ。」
「大体、潜水艦に進入してくる奴なんて、いないっすよ。」
「そんな事が出来る大道芸人がいたら、お目にかかりたいものだな。」
「アメリカ式蜘蛛男もビックリする芸当だな。」
「まぁ、色々やる事多いからな。日直のやらない細かい部分までチェックしなくちゃいけないしな。」
「ただ、ボーッと看守してるわけじゃありませんしね。」
「潜望鏡で周囲のチェックはしなくちゃいけないし、やる事は多岐にわたりますね。」
「それだけ潜水艦乗りは気を使うのよ。」
「若い衆は良いかもしれませんが、幹部の人達にはキツイんじゃないですか?」
「バカ言っちゃあいかんよ。先輩達の方がコツを知ってるから、楽なんだよ。何も起きなきゃな。」
「アメリカよりも日本の方が強いのは、厳龍のおかげですからね。」
「そうだよ。西東二等兵の言う通り。厳龍のいない大日本帝国は、矛を失った武将も同じ。」
「これから厳龍を越えるsubmarineは出ますかね?」
「時代は流れてますからね、出てくるでしょう。」
「出てこないから、こうして厳龍で夜勤をしてるんじゃないですか?」
「まぁ、俺達が現役の間は大丈夫だろう。」
「そうですね。先々の事を心配しても仕方ない。」
「海上自衛隊が誇る最強の通常動力型潜水艦だからな。」
「そのうち、金に暇をつけなきゃ優秀な艦が出来ますよ。」
「海の中は、味方がいないからな。」
「そこが、空中や水上や陸上とは違う所ですね。」
「だからこそ、こうやって当直をやるわけですね。」
「身が引き締まりますね。このラッパの音聞くと。」
「さぁ、交代の時間だな。今日もお疲れさま。」
こういうだらけた兆候が、出始めた時は注意する必要が、ある。




