一撃必中敵艦撃破
その間にも、大和からの打電は続いていた。
「油断するな。まだ周囲にもう一隻空母がいる。」
それは、軍人としての匂いを察知する嗅覚であった。設楽少尉がまた一つ大きな艦船を見つけた。
「前方2マイルの所にもう一隻の敵空母を発見。位置は方位○×××。」
「了解!第二撃発射用意。」
「倉沢少佐、89式でもハープーンでもないこの時代の酸素魚雷2本あったよな?」
「43式でありますか?(まぁそんな魚雷はないんだが。厳龍の乗員はそう呼んでいた。)あれの性能を試したいという事ですね?了解しました。5番管発射用意!」
その作業を終えたその時、大和からの定期連絡の内容が変わった。それは厳龍に撃沈されたアメリカ海軍空母の事だった。
「89式なら一発で沈められるのか?」
「はい。」
「じゃあここは貴重な89式ではなく、43式魚雷の威力を試させてもらいましょうか。」
その一人事はまるで、目の前にアメリカ軍人がいるのではないかというような口調であったが、明らかに戦闘時の沖田は、戦闘を楽しんでいた。
「倉沢少佐、準備よろしいか?」
「シグナルオールグリーン。万全です。」
「テーッ!」
5番菅から発射された43式酸素魚雷が、アメリカ海軍空母の土手っ腹に命中した。先ほどと同じ様に、設楽少尉が潜望鏡にて視認していた。
「敵空母に魚雷命中被弾の後火薬庫に引火」
二隻目の空母は火薬庫に引火して大爆発を起こした。流石に二度目の命中は、我慢出来ずその場でガッツポーズする者もいた。沖田もそれをとがめる様子はなく、大和副艦長土浦中将に、更なる敵艦目標はいないか、冷静に聞いていた。
すると、大和のすぐ近くに戦艦クラスの大艦がいる事が分かり、それを沈めるように命令が出た。
「なぁ井浦少佐?戦争ってすげぇな…。」
興奮気味の倉沢少佐に対し、冷静な井浦少佐はこう返した。
「俺たちの放った魚雷で何千人ものアメリカ軍人が死ぬ事になる。」
その言葉に深く頷いていたのは、沖田だった。




