豊かさの代償
本日の当直は、大橋中佐、真野大尉、川名曹長、山宮一等兵、村沢二等兵の5人であった。
「最近、空気不味くなってないか?」
「そうですか?」
「環境汚染が話題になる昨今、日本も隣の対岸とは、いかないようですよ。」
「ほう。」
「新聞やニュースでは話題になってるらしいな。」
「経済成長を続けるのか、環境問題に策を打つか。そのどちらかですね。」
「今の国民の大半は経済成長を、優先的に進めるだろうな。」
「二兎を追うことは、出来ない訳ですね?」
「共存出来る妥協点は、あるでしょう。」
「未来の事まで考えてる余裕があるか…だな。」
「今も昔も、今を生きるだけで精一杯だよ。」
「自由な時代ってのも、考えものだな。」
「豊かさを追い求める事は、悪いことではないと、感じますが。」
「自分さえ良ければ良いんだよ。所詮。」
「食べるだけで精一杯だった頃とは違うからな。」
「とは言え、目先の利益には食いつくよ。」
「人間は、神様なんかじゃないからな。罪深き悪人だよ。」
「だからと言って好き勝手やるから、代償を後送りにして未来の世代にツケを支払わさせる。」
「この不毛な論議を、潜水艦乗りが話し合うのは意味がありません。」
「そうですね。これは国民の代表である政治家が、やるべき事ですよ。」
「政治家の仕事までやれたら、厳龍は無敵だな。」
「いずれにしても、誰かがツケヲ払うんだ。」
「それが、未来の人間であってはならんのだよ。」
「小さい事も積み重なれば、山になる。」
「塵も積もれば山となる。ですね。」
「んな事より、明日からの連休中のシフト確認しとけよ。」
「そうですね。自分等はあくまでサブマリナーですから。」
豊かさの代償を支払うのは、国民だけとは限らない。厳龍乗員のような海軍兵士でも、海外にいる日本人が、皆等しく負担する。例え、未来の子供たちを犠牲にする事がないように。




