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深海の精鋭たち(サブマリナーズ)  作者: 佐久間五十六
昭和の大日本帝国海軍の潜水艦

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心残り

 人類史上、世界に多大なる影響を及ぼした大国は、皆等しく軍事大国であり、経済大国であった。

 豊かな国はこうした基盤がなければ繁栄を維持する事が出来ない。その日暮らしの場当たり的な生活をしていては、発展はない。

 現在の日本(1958年4月)は、この両方の条件を満たしており、立派な大国であった。

 戦争に勝ち続けた事で、味方も増えた。環境が変われば、立場も変わる。決して日本人が世界一の大国を目指していた訳ではない。強国になるという目的も、達してしまった。

 自分の国が、自分達の生活が守られていれば。日本人のそうした思いとは、裏腹に国民のマインドコントロールに成功し、味をしめていた大本営は、更なる軍事基盤の強化と、日本が世界の覇権を握るための、行動を起こしていた。

 その延長線上に空母の強化配備と、核武装があることは、言うまでもない事であった。

 一方、厳龍ではいよいよ、乗組員の大幅な入れ替え作業が、大詰めを向かえていたのである。

 沖田の作成した「厳龍マニュアル」にそって、戸村哲也新艦長の下で引き継ぎをしていた。新体制の発足は1958年9月1日からで、残すところあと一ヶ月を切っていた。

 沖田は、戸村新艦長に厳龍を任せる事に、一切の不安もなかった。人員の入れ換えを、大本営に打診した時は、不安で仕方なかった。ただ、それを伝えてからの戸村新艦長の働きや、一生懸命さは、沖田を安心せしめたるもので、あった。

 海上自衛隊にいて、こんな経験をした事はない。防大時代の部活動の年次入れ換えなら経験した事はあったが、余りにも規模が違い過ぎる。

 歳を考えれば、海上自衛官としての自分はもう終わっている。今は、帝国海軍軍人の一人として、悔い無き予備役に入る。

 新兵の理解力がどれだけあるか、不安であったが、皆程度の差はあれど、それなりにしっかりマニュアルを理解してくれていたようだ。

 嗚呼、これで自分の仕事も全て終わったんだと思った。心起きなく沖田は厳龍を去ろうとしていた。

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