新参者への期待と不安
本日の当直は、草原軍曹、山川二等兵、雨宮二等兵に加えて、先任海曹長改め新艦長の戸村大佐の、4人だった。
「急に階級が上がっちゃうんだもんな。」
「俺なんて艦長だぜ。笑っちまうしかないよな。」
「致し方ない部分はありますよね。老いには勝てない。」
「年齢で区切るってのは、苦肉の策だったんでしょうね。」
「沖田艦長はよくやってくれたと思う。俺が言うのも何だけど。」
「簡単な話が、下がボトムアップして、出た上は退役って事っすね。」
「分かりやすくて良いじゃないですか?一等兵や二等兵のままじゃ、ヤル気無くなりますからね。下の人間はよく我慢しました。」
「確かに悲惨なめに会いましたからね。特進は妥当かと。」
「荷が重いよ。誰か代わってくんねぇかな。」
「そんな事じゃ先が思いやられますね。まぁ、しっかりやって下さいよ。」
「二等兵のままじゃ終われないとは思ってましたが、まさかの少尉昇進ですよ。夢物語じゃないですよね?」
「自分の頬つねってみろ?痛いだろ?それだけの努力が報われたんだよ。」
「人員を入れ替えるなら、今しかないってタイミングで、動いたと思うよ。」
「ヨボヨボのじいさんに海中生活はきついよ。」
「新しく入って来る人間って、どんな人達なんですかね?」
「日本海軍に徴兵されたレッドペーパーソルジャーではなく、志願兵だろうな。」
「いや、もしかしたら、大本営は経験の浅い新兵ばかり寄越すかもな。」
「可能性は、充二分に有り得るな。そっちの方が教えやすいし。」
「なまじ知識があると、成長を邪魔しちゃうからな。」
「入って来るのは、若い下士官、や兵隊ばかりでしょうし。」
「そっちの方が、受け入れる方は楽だろうな。」
「上だけすっぽり変わるよりは、よっぽどマシかと。」
「まぁ、そうはいっても、自分達のやるべき事は変わりませんからね。」
「そうですね。一日も早く新兵を育てて戦力にしないと。」
「自分達がやってたくらいは、やって欲しいな。」
「そこまでのレベルを最初から求めるのは酷だと思うが。」
「どっかの日本海軍の潜水艦で勤務してた連中をかき集めたとか?」
「まぁ、んな事よりも厳龍は、生半可な気持ちじゃ動かせないって事を教えてやろうぜ。」
「これから忙しくなりそうだな。」
どんな兵器を持とうとも、それを扱う人間がしっかりしていなければ、ベストパフォーマンスを繰り出す事は出来ない。機械も人間と同じなのである。




