因果応報
本日の当直は、山野少佐、小田島少尉、鈴村軍曹の3人であった。
「艦長と副長はワシントンに行かれたそうだ。」
「何か大切な用事でもあったんですかね?しかし、何故今アメリカに?」
「厳龍トップ2の訪米は、何か意図がありそうですね。」
「軍縮会議があるらしい。議長国はアメリカのようだ。」
「大戦が終結して10年、止まる事を知らない軍拡に歯止めをかけようって訳ですね?」
「最も、日本にとっては年々増加する、国防費の増額には頭を痛めてますもんね。」
「決して経済状況が爆発的に良い訳でもないからな。」
「国防費用が、経済成長の足枷になっているのは、周知の事実です。」
「しかし、何故大本営のお偉方や大物政治家が行かないんですかね?」
「現場の中でもエース級の人材を、過去の軍縮会議に送った例は、なくはない。」
「現場を知る人物の方が適任だと判断したんでしょう。」
「大本営の意図は分からんが、政争に巻き込まれちまったな。」
「そうかも知れませんが、無事帰ってくる事を祈りましょう。」
「日本の未来を決める会議に、なるかもしれませんね。」
「まぁ、今の自分達に出来る事は、この当直をしっかりこなす事ですかね。」
「そうですね。目の前の平和を守る事。」
「人員整理やら、トップ2が不在やら、今が厳龍が一番弱っている時ですからね。」
「兵器と人員を入れ替えた時は一番のウィークポイントかもな。」
「まぁ、そうは言っても、日本も世界の五本指に入る軍事大国ですから。」
「自分達がいた世界とは、真逆ですね。」
「因果応報というのは、まさに今のような状態を言うのかもしれない。」
「経済そこそこ、軍事大国っていう選択肢もありですね。」
「どっちが良いかなんて分かりませんが、なるようにしかなりませんよ。」
「今日も日本の海を守る。それだけだよ。俺達には。」
「アメリカだろうが、イギリスだろうが、ロシアだろうが、かかってこいと!あ、ロシアとは、同盟関係にあったんだ。」
「油断は禁物ですが、負けるつもりはありません。」
「少なくとも、海の中では…な。それはそうだよな。」
「サブマリナーにとって、深海こそ戦場なんですよ。」
「そこで、どうやって結果を出すのかが、大切なんですよ。」




