難題
本日の当直は、磯村中尉、前橋伍長、真野上等兵の3人だった。
「何だか新入りが、来たらしいな?」
「今月だけで、もう3回目ですよ。新兵訓練。」
「まぁ、厳龍に配属になることはないでしょう。」
「いや、それは分からんぞ。大本営は、厳龍乗員の大幅入れ替えを、考えているのかもしれん。」
「とは言え、覚える事沢山ありすぎて、辞めちゃうんじゃないですか?」
「なぁに、郷に入っては郷に従えって言うじゃないですか。」
「艦長が、人員の入れ替えを本気で考えておられるのだろうか?」
「そうですね。艦長ならその辺のプランも抜かりはないんじゃないですか?」
「そうですよ。艦長ならパーフェクトに仕上げてくれますよ。」
「厳龍の艦長として、いくつもの修羅場を乗り越えて来たしな。」
「そうですよね。知識と経験も申し分ない。」
「深海で堂々と戦うには、根性論や精神論だけじゃダメですよね。」
「どんな人間が、来てもしっかり教育しなくちゃな。」
「そうですね。来る者には日本海軍伝統の…。」
「駄目ですよ。そんな古風なやり方じゃ。」
「それもそうだな。まぁ、大本営と海軍大臣が上手くやるだろう。」
「問題は、それによる戦力の低下だろう。」
「一時的なものにしないと、ヤバイかもっす。」
「戦力の一時的なダウンは、艦長も大本営も覚悟しているだろう。」
「とは言え、日本海軍にとっては死活問題だぞ。」
「せめて、もう少し空母艦載機の練度を上げる事が出来ればな。」
「まぁ、そうですね。誰が厳龍を使っても同じレベルに持って来るのが、理想的だな。」
「ノウハウは自分で試行錯誤しながら、身に付けるもの、ですからね。」
「新人には厳しいかもしれないが、手探りで、やって欲しい。」
「僕らの心配が、取り越し苦労であれば良いのですが。」
「最初から完璧に出来る人なんていませんし。」
「厳龍にとっては人員の入れ換えは最難関の課題かもな。」
これだけ練度の高い、潜水艦乗り組み員を育て上げるのは、かなりハードルの高い難題であった。




