下士官の補充
この日の当直は、大木曹長、福川軍曹、草原軍曹の3人だった。階級が近いせいもあってか、話が弾んでいたようである。
「平和な世の中にいると、戦いの感覚忘れちまうな。」
「やれ、空母だ、核兵器って騒ぎますが。」
「実際は、日本が持つをような代物じゃないんだよ。」
「土台、無理な話なのかもしれませんね。」
「とは言え、この地政学的な状況を考えると、武装しないっていう選択肢は無いんだよな。」
「そうですね。日本国民に無茶を御願いして、何とかなってますが。」
「まぁ、日本海軍にしても陸軍や空軍にしても、金のなる木だからな。日本国民は軍に食わせてもらってる一面もあるんだがな。」
「まだまだ、庶民の生活はひもじいよ。」
「この世界の日本が高度成長するとは、思えないんだがな。」
「それは自分達がいた、世界も同じでしょう。」
「アメリカの顔色を伺うより、よっぽど今の敵対関係の方がやりやすいっちゃあやり易いでしょう。」
「厳龍という未来の兵器一つで、世界はここまで変わるものか。面白いもんだな。」
「だからと言って、未来に帰れる道は未知だ。」
「とにかく、厳龍が動くうちは乗り続けますよ。」
「と言っても、幹部はもう退役間近のオッサンばかり。」
「後継者を海軍から提供して貰えば良いじゃないんですか?」
「今も海軍兵学校は機能してますからね。」
「ばぁか。エリート補充してどうすんだよ。」
「若い幹部と下士官や兵だけを残して、後は皆予備役。」
「いずれにしても、俺達の目が黒いうちに、やらないといけない。」
「まぁ、その辺は上が決めるでしょう。下は指示待ちですよ。」
「多分、そうなれば俺達は、月月火水木金金、だなぁ。」
「退役しても、日本海軍は老兵をこき使うって言うしな。」
「そうならない事を願うばかりですね。」
「こんなに日本海軍に尽くしてるんだから、もう少しsalary上げてもらわねぇと。」
「どうせ金もらっても使う暇がねぇ。欲をかくとバチが当たりますよ。」
「そうだな。福川軍曹の言う通りかもな。」
考え方や、思想や信条の自由は保障されていながらも、統制が取れているのは、私と公という感情が下まで、浸透していたからである。




