沖田の生家で知りたかった事
日本空軍視察後の半月程たった真夏の事だった。
沖田幸三少将は、呉を離れあることを確める為に、小田島少尉と山川二等兵を伴って、ある場所に向かっていた。
そこは、奈良県にある沖田の生まれ故郷であった。何故今頃になって、部下を引き連れてやって来る必要があったのか?それは沖田のみぞ知る事であった。
沖田はかすれかけていた、生家の記憶を掘り起こして、小田島少尉と山川二等兵と伴に生家周辺を調べた。結局そこには雑木林しかなく、沖田の知りたかった事や確かめたかった事は、分からずじまいであった。
沖田には、8歳歳上の兄がいた。沖田が生まれたのが、1959年11月18日生まれであるから、兄の生まれた年代は、今頃という事になる。兄の生年月日は、1951年11月7日であるから、もしこの世界に、沖田の兄が住んでいたならば、住宅がなければおかしいのである。
やはり、我々がここに来てしまった事で、何かが違う歴史になっている事は、確信を持って言える。どうやら、1945年3月15日という時間軸から、起きるはずのない新たなる世界を、沖田達は生きてそれと同時進行で、世界もあるはずのないセカンドストリートを歩んでいるという事を確かめに来たようだ。沖田が知りたかったのはそれだった。
「すまんなぁ。こんなどうしようもない任務?に付き合わせてしまって。」
「艦長のやっている事は、無駄な事ではないですよ。」
「元の世界に戻るきっかけは、自分でつかまないと。」
「実家にくれば何かが掴めるかと思ったんだがな。」
「時間軸が違うから、歴史は必然と変わりますよ。」
「もうひとつの世界を我々は生きているんですかね?」
「本当、小説や漫画の世界みたいな話だよな。」
「さて、そろそろ行きましょうか。ここには何も無さそうですし。」
「自分の様な下っ端には、良い気分転換になりました。」
歴史が別のベクトルを向いているのだから、当然その先には、自分達の知らない世界が、そこには広がっているわけである。




