patrol
沖田が、少将に昇格しても、厳龍が直接出向いて作戦や指揮をする場合は、必ず厳龍に乗って出向いた。
それは、沖田のポリシーというよりも、スタイルに近かった。この日は、呉基地近海での模擬訓練から引き揚げて来た所で、艦内には数名の作業員を残して、皆外出に出庭っていた。
残っていたのは、鈴木大尉、佐々少尉、鈴村軍曹、倉川上等兵の四人であった。
「こうやって残るのも悪くないな。」
「残業代が出る訳ではないし、特に期待はしてませんけど。」
「なんてサービス精神に富んだ兵士なんでしょう。」
「一応、僕らは海上自衛官なんですが。」
「バカ野郎。今はお仕えする相手が違うだろう。今は日本海軍の一員で、海軍大臣や連合艦隊司令長官に仕えるだろ。防衛大臣も、防衛省も、どこにもない。」
「そう、ここは1951年12月だし、俺達のパトロンは日本海軍だ。」
「こうやってパトロールを残しておくのは、見張りを怠るなと言う、艦長の方針なんですよね?」
「いやいや、普通にパトロールはするだろ?」
「このsubmarine(厳龍)が誰かの手に渡ったらまずいだろ?」
「そりゃそうだろ?最新鋭最高機密の塊じゃないか?」
「世界を変えちゃう実力があるからな。」
「ありそうじゃなくて、あるんですよ。」
「全員が外出出来ない理由はそれだな。」
「日本海軍の兵士に任せないのは、艦長が海軍を信用してないから。」
「日本海軍とは、あくまで契約してるだけですもんね。」
「そうでもなければ、ただの使い走りだろ。」
「お互いにしたたかなのさ。艦長も米内大将も。」
「アメリカに勝てたのは、そういうしたたかさが力を発揮したからさ。」
「しかし、皆が楽しんでるのに、自分達だけ…。」
「大丈夫ですよ。我々も別日に外出出来ますから。」
「不公平な扱いは、部下の恨みを買うからな。艦長もその辺の事は、よく分かっているよ。」
「一蓮托生の潜水艦乗りにとっては致命的だな。」
「それにしても、異常が無いのが何よりの救いですね。」
何時でも、厳龍は出撃出来る様に待機する体制を整えておく事が、厳龍には求められていた。




