男達の潜水艦
【あらすじ】 海上自衛隊初のAIP通常動力型潜水艦そうりゅう型の4番艦「けんりゅう」(SS-504)が、本作品の深海の精鋭たちのモデルである。名前は「げんりゅう」(厳龍)母港は海上自衛隊呉基地である。通常のディーゼル潜水艦に比べて、低速時の水中持続力が2週間以上延長され、攻撃目標を見失う事なく89式魚雷か、ハープーン級USMで攻撃する事が可能である。通常動力型潜水艦としては、間違いなく世界最高水準にあり、原子力潜水艦にも充分対抗出来る潜水艦である。
そんな最新鋭潜水艦の艦長沖田幸三一等海佐(53)の数奇な運命を描く。それが「深海の精鋭達」である。
2012年8月15日。この日は第二次世界大戦で日本が米英を中心とする連合国に敗れてから67年目の日だった。大戦当時の戦争経験者は、高齢になり戦争の記憶は風化し、歴史教科書の一ページになろうとしていた。
米軍の国際法を無視したありとあらゆる策によって骨抜きにされたあげく、軍隊にあらずも米軍後方支援に特化した武装組織それが、自衛隊であった。
沖田が海上自衛隊に入隊した頃は、すこぶる自衛隊への風当たりは強かった。それは旧日本海軍の士官や下士官らが前身の警察予備隊以来自衛隊に存在していたからである。もちろん、彼らが悪いことをした訳ではない。凄まじいまでの反日、反国教育が全盛期の頃だったからでもある。
日本を守る為の人員を公務員扱いし、臭いものには蓋をするかのような待遇だった自衛隊。そんな自衛隊への風当たりが、変わったのは度重なる自然災害のおかげだった。
おかげと言っては自衛隊に失礼だが。自己完結能力に特化した部隊は、警察・消防・海上保安庁やその他行政機関にはない。最後の砦として、厳しい制約はあるものの、必死のまさに命をかけた仕事ぶりで、国難に立ち向かっていた。
ただ、それは彼らの本来的な仕事ではない事は感じていた。人を助けるというのは、ただ体を鍛えれば良い訳ではない。時によっては命を奪う事もある。それが自衛隊だ。