第一章 "竜種たち" Epsode 1 『白き花と羽毛の竜』
レオンさん、書いてて楽しい。
・・・山まで、来てしまった。
あ、いや違うんだ。竜を見たい興味本位とかそういうヤツではないんだ。普通に考えて、山に竜が出た噂が出てるのに山に入るヤツなんてイヤイヤ期の子供か愚かな冒険者だけだから、商売敵どもが山の薬草を採る事は無くなるはずなんだ。だから当然需要と供給が釣り合わなくなるから、足元見て滅茶苦茶にボッタ値を付けれると思ったんだ。
「・・・誰に言い訳してるんだ、俺は・・・」
・・・ただまあ、どうせ噂は噂だ。そういうのを信じない俺にとっては、普段は採られる前に採るサバイバルだったのが、今日に限りゆっくり採っていても問題ないのだ。ありがたい話だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数十分後―――
ブラウディンにプレゼントする用に樹海であまりにも怪しすぎるキノコを採っていると、開けた場所へ出た。少し疲れたし、ここでゆっくり休むのも悪くはない。
「普段沢山徳を積んでいるからかな? まさか薬草採り中に休憩できる日が来るとは思いもしなかったな・・・ん?」
岩に腰かけて休んでいると、岩の影に見慣れない白い花を見つけた。
「・・・? 綺麗な花だが・・・花屋に嫌がらせしに行った時にも、商売敵の薬草屋に嫌がらせしに行った時にも見た事がないな・・・」
「・・・ってことはつまり相当貴重なヤツって事じゃないのかッ!? とっっっっても香ばしい金の匂いがするぞォォォッッ!」
金の気配をビンビンに感じ取り若干ハイになりつつも、慎重に掘り出す。
◆
「ララランラララーーーーンッ! 神様は本当に居たんだァァーーー♪ 僕たちを見てくれているんだァーーー♪ 良い事をすると良い事が起こるんだァーーー♪ ルルルランララーーーーンッ!」
長時間金の気配を近くでビンビンに感じ取り過ぎて完全にハイになりながら帰路に付く。足取りはこれまで体験したことのないほど軽かった。
「ルルルルーラーラッラッラーラッ! 今日ゥはお花摘みィッ! 可愛ッい花にはトォーゲがッあるッ! ルルリンリーーーンッ!!! ラーラーラッラーーーーーーーンッ! ルラ『ヒトというのは・・・』
『何故いつの時代も・・・こう・・・騒々しいのだ・・・?』
――――遥か上空より飛来した"ソレ"は、翠色鱗の蛇のような胴体に、羽毛に覆われた翼の生えたような姿の"竜"であった。
「・・・ワーオ。ドラゴンは本当に居たんだ!噂は嘘じゃなかった! ってか」
『・・・? 貴様一人か? 何故一人でアレほど騒いでいたのだ・・・?』
(ッ!? マズイッ! この『花』の事がバレたら分捕られるかもしれないッ!)
『・・・おい、質問に答えろ』
「あー・・・えっと、今日はいつもより大漁に薬草が採れたのでハイになってたんです!」
こういう時は、根っからの出まかせよりも嘘とも本当とも言えないラインを突くと自然な演技になり信用されやすい。経験がモノを言った。
『・・・ふむ。それは良かったな。良ければ見せて貰えるか?』
終わった。
◆
『この"花"は・・・』
ヒトの基準では余りにも巨大な爪を器用に使い、"花"をいじる"羽毛の竜"
(クソッ・・・! なんでこんなに好奇心旺盛なんだこのドラゴン・・・! 大抵こういう時は『・・・そうか。ともかく、あまり騒ぐな』か『そうか。なんにせよ死ね』のどっちかだろうがッ・・・!)
『・・・あまり睨むな』
「エッ! アッイヤッ そういうわけじゃ・・・」
盛大に声が裏返ってしまった。幸い、こういう事に慣れてるのか余り気に留めていない様子なのが救いか。
『・・・ヒトよ。 この"花"は貴様の物か?』
「(・・・ッ! 所有権を主張するチャンスッ!)はい! その"花"はワタクシの物であります!」
『・・・そうか。 私は"ククルカン"と言う。貴様の名は?』
「ワタクシの名前は『リチャード・レオン』と言うであります!」
『そうか。 それではリチャードよ、この"花"は返還しよう。それとその語尾はやめろ』
「(ありがとうございますであります!)ッシャッ!!」
◆
「・・・あの、すいません"ククルカン"さん、なんで付いて来るんですか?」
『? "花"を持っておったのだろう?』
「まあ、そうですけど・・・」
『・・・ああ、もしや今のヒト連中には"白花"伝説が伝わっておらんのか・・・』
何やら重要そうな単語が聞こえた気がしたが、思い切ってスルーする。いざコレを売るって時に、変にこの花に未練が残ってたりすると交渉の中でなにかと面倒くさい事になりかねないからな。
『"白花"伝説というのはだな・・・』
なんなんだコイツ。
読んでいただきありがとうございます!
良ければ評価や感想、ご指摘など頂けると嬉しいです!