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第一章 "竜種たち" プロローグ

ドラゴンの中だとリンドブルムとワイバーンあたりが多分一番可愛いと思います。

『ヒトの身体は往々にして貧弱だ。私の背中に乗っておけ、リチャード』

『・・・お前この中で一番足遅いだろ、"アッシュ"』

『速ければいいという訳ではない。リチャードを振り落としたいか? "レヴィ"』


 全長14mはあろうかという巨大な二体の竜が、互いに何やら唸りながら小突き合っている。



『なぁ、なんでアイツらは誰が乗せる~で争えるんだ? どう思うよ"ケツ"』

『・・・暑いからあまり頭の方には近付くな。それと私の事は"ククルカン"と呼べと言ったはずだぞ、"サラマンダー"』


 全長12mほどに見える一体の竜と、その上に乗った手のひら大サイズのトカゲが、互いになにやら鳴きながら小突き合っている。



「ホラ喧嘩しないで! 騒がないって約束で連れてきたでしょ!?」


 その竜らに叫びかける、勇気と無謀の区別もつかぬ愚かなるヒトがひとつ。



『・・・ホラ、怒られてんぞ"アッシュ"』

『はて? ワシの目には、"レヴィ"貴様に向かって言っていたようにしか見えんかったぞ? 自覚がないのは一番タチが悪いぞ"レヴィ"』


 分厚い灰色の鱗を全身に纏った巨大な竜と、滝のように流れ続ける水流を全身に纏った巨大な竜が小突き合う。灰色の鱗と水流が触れ合う度に、爆音と共に鱗が地面へ叩きつけられ大地が揺れる。



『・・・なあ、俺達は怒られてないよな? "ケツァル"』

『"俺達"と括るな。それと私の事は"ククルカン"と呼べ、"サラマンダー"』

『おっ! "ククル"カンだけに"ククル"なってかぁっ!?』

『・・・忘れてやる。ソレは二度と口にするな・・・熱ッ!?』


 羽毛に覆われた翼を持つ竜に乗った、一匹のトカゲの身体が突然燃え上がる。羽毛の竜は、たまらずそのトカゲを振り落とす。


『おい! いきなり振り落とすなよ! "ケツ"!』

『このクソトカゲめが・・・あのクソギャグにはアレでもまだ慈悲深いわッ!』


 地面に叩きつけられた衝撃を意にも介さず金切り声を上げるトカゲと、それに反論するように唸る羽毛の竜。







「―――ああもう! みんなお留守番してなさい!」


 ・・・もう我慢の限界だった。愚かなるヒトの名は、リチャード・レオン。ただの薬草屋である。



(なんで、竜なんか連れて薬草毟りに行かなきゃいけないんだ―――)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


昨日―――



「―――お兄さん! 見ない顔だけど冒険者志望の人かい!?」

「はい! これから冒険者ギルドでギルドカードを発行してもらう予定です!」

「それはいいねぇ! そうだ、そういう事ならこれから薬草とかも欲しくなってくるだろ? うちで買ってかないか?」

「ああ、それじゃあお願いします! どういった薬草がオススメですか?」

「やっぱり初心者はこの薬草かな! 即効性が高いヤツで500Gポッキリ!」

「500Gですか・・・結構しますね・・・」

「初心者冒険者の人はビックリするけど、これでも薬草の中じゃ安い方だよ!」

「あ、そうなんですか? じゃあソレでお願いします!」

「はいまいどっ! 気を付けてね!」




「・・・おいリチャード、またやったのか? 今大切そうに10Gぐらいの薬草持ったヤツがギルドまで走って行ってたぞ」

「・・・ブラウディンか。なに、効くと本気で信じれば雑草でも効くモンだ。一応アレも薬草だからそりゃもうすげえ効くはずだぞ? それに、俺は社会の厳しさを教えてやってるだけだ。寧ろ490Gで済んだ事に感謝して欲しいね」


「お前、アレ500Gで売ったのかよ・・・」

「最高記録は3000Gだ」



「・・・ああいや、それより、山にドラゴンが出たって噂知ってるか?」

「・・・? なんだそれ、知らないぞ。どういう噂だ?」

「いや、山にドラゴンが出たって噂だぞ。それ以外ないだろ」

「・・・その通りだな。山にドラゴンが出たらしい噂からは山にドラゴンが出たらしい事しかわからん」



「ま、ソレだけだ。薬草採りに山登ってドラゴンに食われないようにな」

「お話しに来ただけかよ。一個ぐらい薬草買ってかないか?」

「あいにく一週間前お前に騙されて買った大量の薬草がまだ残ってるもんでな。んじゃ」





(・・・それにしても、山にドラゴン・・・? トンデモな噂を流す奴もいるな)

読んでいただきありがとうございます!

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