さよなら昔の私
彼と食事をするのは何年振りかな?
久しぶりにおしゃれをした。
落ち着いて話しをしたいと思い、
金曜日の夜、遅めの時間にレストランを予約した。
薄暗い照明で落ち着いたお店だった、
8時を過ぎということもあり、
お客さんはまばらだった。
「昔と変わらないな。」
「それ褒め言葉?成長が無いってこと?」
「褒め言葉だよ!」
彼の笑顔がなつかしい。
二人の間にある空白の時間がまるで無かったように、
時間は過ぎて行く。
私が美化したのでは無く、
彼は「良い人」なのかもしれない、
私は嬉しくなった。
彼との久しぶりの食事はとても楽しかった、
お店を出ると彼は、
「俺たちやり直せないかな?」
と聞いて来た。
私は返事が出来なかった、
私の中の「私」が心を許していない。
「まだ様子を見て!」と…
そしてもう一人の私が、
「OKしかないでしょ?」
と焦っている声が聞こえて来る。
「俺の家に少し寄って行かない?」
彼が聞いてきた。
私も大人の女性として「その」用意はしてある。
「じゃ少し。」
私は彼に家に行くことにした。
彼のマンションは駅からは少し遠いけど、
新しくて重厚感のあるマンションだった。
部屋は男性の一人暮らしにしては綺麗な部屋だった。
何か証拠があるわけではないが、
多くの女性をこの部屋に入れたなと、
直感でわかった。
彼は手際良く飲み物を用意した、
ほろ酔いの彼から早くベットに行きたいという、
気持ちが伝わって来た。
少しおしゃべりをして私たちはベットに入る、
久しぶりの彼を感じて私はなぜか悲しくなった。
そこには昔とは違う彼がいたからだ。
多くの女性と関係をもったことがわかる。
彼に抱かれているのに、
心は虚しかった。
私は朝早く彼の家を出た、
朝の空気はなんでこんなに綺麗なのかな?
夜の間にリセットされているのかな?
それにしても朝日が眩しい。
そんなことを考えながら駅に向かう。
私の心は軽かった。
今まで私の心の中にあった重い荷物が無くなったからだ。
私は、
素直になれない自分、
フラれた自分、
未練ばかりの自分が嫌いだった。
でも彼と寝てすべてがリセットできた。
彼は私じゃなくても、
欲望を満たす為なら誰でも良かったのだ、
彼に抱かれて愛を感じることは出来なかった、
ただ一時の欲望を満たす為の行為。
彼は変わっていた。
彼を好きだったこと、
彼を忘れられなかったこの数年に後悔はない。
でも新たな道を進むタイミングが来た。
空を見上げると真っ青な空に真っ白な雲が浮かんでいる、
今年の夏もまた暑くなりそう。
おわり