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元カレ  作者: 田中らら
2/5

あまりに唐突で私は言葉が出て来なかった。


「他に好きな人がいるんだ、会社の後輩」


「俺がいないとダメな子で、彼女の傍にいてあげたいんだ。」


私の身体から血の気が引いた。

手足が冷たくなり、言葉が出て来ない。

何が起きているのか理解できない。

現実を受け止められず、立っているのがやっとだった。


「本当にごめん、このまま二股は嫌だったから、

おまえは強いから大丈夫だよ。

俺じゃなくても大丈夫。」


私は泣かないように空を見上げた、

今まで見たことがないような綺麗な星空だった。

「そう、わかった、

好きな気持ちは抑えられないよね、

私は大丈夫だよ。」


私は悲しく笑った。


暗闇で彼には見えない笑顔だった。


彼が波打ち際を歩いて行く、

彼の姿が暗闇に消えて行く。


「待って!!」

持っていたスマホが落ちて目が覚めた。

また同じ夢。


私はスマホを拾い部屋に戻る。

夜風で冷えた身体を温めようとお風呂場に行く。

鏡に映る自分が嫌い。


私はYouTubeでジャミロクワイをかけて、

お風呂に入る。

冷えた身体に温かいお湯が気持ちいい。

そしてまた泣いている。

なんであの時、あんなに強がったのか?

なんであの時、素直に別れたくないって言えなかったのか?

なんであの時、私は強くないって言えなかったのか?

なんであの時、冷静な振りをしたのか?

なんであの時、涙を見せなかったのか?

なんで、なんで、なんで…

私もあなたが傍にいないとダメだったのに…


人間は失ってから始めて大切だったと気付かされることがある。


彼は私の中でとても大きい存在になっていた。


海で話したあとに彼が家の近くまで送ってくれた、

海での別れ話しのあと何を話したのか覚えていない。


私は家に帰り部屋の明かりをつけた、

部屋は綺麗に片付けてあり、

ベットには新しいシーツがかけてある。

涙が溢れて来た。


ほんの数時間前の私の予定では、夜はこのベットに彼といる予定だった。

なのに彼は今、子猫ちゃんと一緒にいる。

すべてが無くなった。

私だけがデートを楽しみにしててバカみたい。

今夜の為に新しい下着まで付けてバカみたい。

そろそろ結婚の話しでもしようか、なんて考えていた私がバカみたい。

色々と考えていたら、

だんだん笑えて来た。

私は1人で何してたのかな?

彼の気持ちが離れたことも気が付かないなんて、

自分のことだけ考えていた自分が恥ずかしい。


後悔と悔しさに押しつぶされそうになりながら、

数ヵ月後、私はその家から引っ越した。


彼を責めた時期もあった。

結局若い子が良かったんでしょ?

私のことなんて好きじゃなかったんでしょ?

私のことを何も知らないくせに、

私がどれだけ愛していたか知らないくせに、

私がどれだけ苦しい思いをしてるか知らないくせに、

私の人生返して、あなたのせいでめちゃくちゃ!

いくら彼を心の中で責めてもスッキリしない。


私の心に大きな穴が開いた。

心の穴はどうしたら埋まるのか?

おいしい物をたくさん食べても、

他の男性に抱かれても、

たくさんたくさん寝ても、

私の心に穴は開いたままだった。


お風呂から出て、ベットの上で寝ながらスマホをいじる。

さっきうたた寝したせいで少しも眠くならない。

時計を見ると11時を過ぎていた。

「まだ大丈夫かな?」

12時過ぎると1人での外出が怖くなる、

11時ならまだ大丈夫。

私は雑誌を買いに近くのコンビニに行くことにした。

私はジーパンに履き替え、

上着はパジャマの上にパーカーを羽織っただけだけど、

この時間に知り合いに会うこともないから大丈夫と家を出た。


6月下旬でも夜はまだ冷える。

あと一ヵ月もするとあの猛暑がまた戻ってくる。

1年が過ぎるのは本当に早い。

家から5分ほど歩くとコンビ二がある。

夜の住宅街は静かで昼とは違った顔をしている。

私が足早にコンビニに向かっていると、


「久しぶり!」

と声をかけられた。

振り向くとそこには彼がいた。


つづく


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