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元カレ  作者: 田中らら
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いつもと同じ夜

いつもと同じ夜。

いつもと同じ世界。

いつもと同じ私。

世界は刻一刻と変化しているのに私は何の変化も無い。

最後に彼と会ったのはもう何年前だろう?

私の時間はあの時から進まない。

私は思い出の中で生きている。

わかってる、現実を見ないといけないことも、

先のことを考えないといけないことも、

延ばし延ばしにしてはいけないことも。

頭ではわかっているけど、

何もやる気になれない。

毎日同じことの繰り返し、

楽しいという気持ちも半分忘れてしまった。

誰かと話すことも面倒で、

人との交流も面倒で、

ただ毎日をこなしているだけの日々。

今の楽しみは夜に1人でベランダでお酒を飲むこと、

むなしい楽しみだと自覚はしている。


いつものようにベランダに出ると、

風の香がいつもと違った。

また季節が変わる。


季節の変わり目に寂しくなるのはなぜだろう?

人間でも季節でも自分の前からいなくなるのは寂しいからなのか?

やり残したことがあるからなのか?

答えはわからないけど、

ただ私の中に虚しさが広がる。

ベランダでウトウトしながら夢を見た。


私は久しぶりのデートで朝からご機嫌だった。

鏡の前を何度も行き来して洋服を決めた。

新しく買った青いワンピース。

彼が「新しい服買ったの?」と聞いて来るだろうと思いながら、

ニヤニヤしながらお化粧をする。

頭の中で今日行くレストランやショッピングするルートを考える、

彼に話したいことも山のようにある、

同僚の愚痴、母のおもしろ話、くだらないテレビの話し、

夜は私の家に彼を呼ぼう、私はベットに新しいシーツをひいて家を出る。

彼は私の家の近くまで車で迎えに気てくれる、

「待った?」

「いや、今来たところだよ。」

彼の様子がいつもと違う、

緊張しているように感じた、

でも久しぶりに会うから、

私も少し緊張していた。

もう3年も付き合ってる、

お互い30を超えて、若い子のようなきゃぴきゃぴ感は無く、

落ち着いた関係だ。

予約したレストランに行く為に彼が車を走らせる、

いつものように私が1人で話している、

彼はいつもと同じ穏やかに私の話しを聞いている。

いつもと同じはずなのに何か違和感がある。


楽しい1日はあっと言う間に過ぎてしまう、

彼を家に誘うと、彼は海を見に行こうと言い出した。

海までは車で20分の距離だが、

その間、車の中は重たい空気が流れていた。

まだ夜は風が冷たくて海には誰もいなかった、

新月だったので海は真っ暗だった。

数メートル先にいる彼が見えないほどの暗闇だった。

そして彼がゆっくり話し始めた。

「別れよう」


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